連載の御依頼を頂いた時、私はデビュー三年目。二度目の直木賞候補にすらなっていない時で、本気で言っておられるのかと耳を疑った。社としては否定するしかないだろうが、私の将来を見据えて賭けて下さったのだと思う。その賭けに勝ったか否かは判(わか)らないが、その意気に応えるべく精魂を込めた。 時に思う。生きている時に戦争が始まることは不幸である。しかし、生まれながらにして戦争の最中であることはさらに不幸ではないか。彼らは誰が、何故、如何(いか)にして始めたか解(わか)らぬものを、無理やりに日常とさせられているから。多聞丸ら楠木党の若き面々、後村上帝、茅乃(かやの)、皆がそうである。彼らは何を想(おも)ったのか。それに向き合いたいと思ったからこそ、南北朝第二世代を描くことを決めた。そして今、同じことが起こり始めている。すでに多くの赤子が生を享(う)けているのである。また、人は戦争を日常とする世代を生み