映画記者の日誌……荒廃したラクーンシティのある住居。リビングのテーブルに、A4サイズのノートが残されていた。 ノートの1ページ目には、日本人の夫婦と1人の小さな男の子の写真が挟まれている。日誌の内容はこの街へ移住してきた映画記者が綴る、7日間にわたる壮絶な記録だった。 Day1空港から車を走らせる間、ひっきりなしに冷たい雨が降り続いていた。幼いころから僕が引っ越しする日はいつも雨だった。 1998年、僕は映画.comの東京本社から、アメリカ中西部のラクーンシティ支局への異動を命じられた。 普通は「こんな人事があっていいのか」と悲嘆に暮れる事案だ。しかし僕は、案外悪くない辞令だと思った。 ラクーンシティは製薬大手のアンブレラ社の本拠地として急速に発展しており、さらに「家族になるなら、ラクーンシティ」のキャッチコピーを掲げ、子育て世代への支援に力を注いでいるらしいからだ。 先進的な教育制度や子