<『害虫の誕生』瀬戸口明久著> ゴキブリ、シロアリ、イナゴ、松食い虫など、人々を悩ます害虫はたくさんいますが、かつて日本には「害虫」という言葉さえなかったといいます。それどころか、嫌われ者のゴキブリも豊かさの象徴だったといいます。『害虫の誕生』の著者・大阪市立大学准教授の瀬戸口明久さんに、執筆のきっかけや「害虫」を通して見えてくることについて、伺いました。 ――この本は害虫駆除の技術書でも、歴史書でも、害虫研究史でもなく、人間が害虫とどう向き合ってきたのか、害虫が人間とどう関わってきたのについて書かれたものですね。何が害虫で、害虫でないのか、害虫の「境界線」は時代によって常に揺れているということがよく分かりました。そもそも、どういうきっかけで「害虫」をテーマにしようと思われたんですか。 ◆最初は害虫駆除史のつもりだった もともと専門が科学史なので、最初はこのような視点で書く予定ではなく
◇小西聖子(たかこ)・評 (ちくま新書・756円) ◇虫をめぐる近代日本の環境史 作物を食いつくすイナゴ、病気を媒介するハエやカ、シラミやノミ--こう列挙するだけで、なんだか体がかゆくなってくるくらい「害虫」は私たちにとってなじみのものである。しかし「害虫」という言葉はそんなに古いものではないと著者はいう。 日本の辞典が害虫という言葉を載せ始めるのは二〇世紀に入ってからのことらしい。たしかに、たくさんの虫の中の一部分を「害」であるということでくくるという態度には、それなりの世界観が前提とされていそうである。 最初ちょっと文章が硬い気がしたが、それも読み進むうち、気にならなくなり、内容の面白さにひきこまれる。うすい新書なのに、知らないことが満載だ。害虫についての生物学的解説とはもちろん違うし、害虫駆除の技術の歴史の本でもない、害虫研究史でもない。この本は「害虫と人間の関係」の歴史を追っている
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