政府が黒田東彦日銀総裁を再任する方針を固めた背景には、自民党総裁選や憲法改正などの重要テーマを抱え、経済分野のリスクを可能な限り避けたい安倍晋三政権の意向がある。アベノミクスの象徴とも言える黒田氏を交代させれば、円相場や株価にも変調をきたしかねない。候補者の選択肢が限られる中で、「現状維持」という最も無難な判断に落ち着いた。 黒田氏に対しては、大量のお金を世の中に供給する大規模量的緩和(異次元緩和)によって円安・株高を実現し、「世の中の雰囲気を明るくした」として、政府内の評価は高かった。現在73歳で、2期目の任期満了時に78歳となる年齢を懸念する声もあったが、体力面での問題も見当たらず、政府・与党では早い段階から再任を求める声が大勢となっていた。5年前の総裁選びの際には黒田氏就任に消極的だった財務省・日銀も、今回はむ…