ダーウィンの唱えた自然淘汰説や、ドーキンスの執筆した『利己的な遺伝子』など、近代は“性悪説”を前提としてきた。その暗い人間観に疑問を持ったのがオランダの歴史家、ルトガー・ブレグマンだ。ブレグマン氏の著書『Humankind 希望の歴史 人類が善き未来をつくるための18章上・下』をもとに、スタンフォード大の囚人実験の真実について紹介する。(全2回の1回。後編を読む) ◆◆◆ ショッキングな「スタンフォード監獄実験」 「普通の人間は、たやすく邪悪な存在に変わりうる」 世の中に流布するこのような性悪説的な人間観を、長らく裏付けてきたエビデンスがある。1971年、米国スタンフォード大で行われた有名な心理学実験「スタンフォード監獄実験」だ。 その内容はこうだ。普通の人々を集めて、被験者を看守役と囚人役に分ける。すると看守役は、囚人役に対して虐待を行うようになる。われわれ人間は、置かれた状況や役割によ