戦争で夫や恋人を失い、あるいは疎開や戦災・戦後の生活難に振り回されたがために婚期を逸し、その後も「ひとり暮し」を続けざるをえなかった女性たちは、戦後30年を経た段階で約100万人いたとされる。1976年(昭和51)生まれの私にとって、そうした境遇の女性は身近な存在であり、わが家の近所にも、また親戚にも何人かいた。 その中のある女性は、学徒出陣により沖縄で戦死した私の伯父の想い人だった。伯父の死亡日は1945年6月23日とされているから、沖縄戦が終わった「慰霊の日」と同じである。彼女は伯父の50回忌を迎えるまで、命日には折々わが家を訪ねてくれた。また別の親戚の女性は、戦後の食糧難の時期に「口減らし」のため里子に出され、その後も他の兄弟・姉妹の生活を支えるために必死に働き、ついに良縁を得なかったという。 私の記憶の中にある彼女らの印象は、男社会の中で不利な立場に置かれながらも、しっかりと自身の