ブックデザインの世界で今もっとも強烈な光を放つ、祖父江慎氏。“書店の棚で異彩を放つ”“造本の定法からの軽妙な逸脱”など評される氏の仕事の根底にあったのは、実は本を作ることへの底深い「愛」であった。その言葉の端々からは、控えめでありながら本とその世界への熱い思いが溢れでてくる。本とその世界への愛を語る、祖父江慎氏の造本術を聞く。 第1話 「テキストや言葉に形を与える喜び」 2月に刊行された『言いまつがい』は、本の四隅が90度ではなくいびつに歪んでいるなど、これほどセオリーから離れるというのは、これまで誰もやったことがないような気がします。どうして可能だったのでしょうか。 それは、きっとスポンサーの糸井重里さんが太っ腹だったからできたんですよ。 本のかどが直角でないのって、取次に嫌われるんです。取次の人から「真四角でないと、詰め物をしないといけなくなる。梱包に手間がかかるのでやめてくれ」ってい