まだまだ元気だった頃のその人影や声の抑揚などをせめて記憶にとどめておきたいという思いから、死化粧を施されて口もきくこともない青山真治――それは、途方もなく美しい表情だったとあとで聞かされたのだが――の遺体に接することなどこの哀れな老人にはとても耐えられそうもなかったので、その旨を伴侶のとよた真帆に電話で告げることしかできなかった。そのとき、受話器の向こうで気丈に振る舞う真帆の凜々しさには、ひたすら涙があふれた。こうして青山真治の葬儀への参列をみずからに禁じるしかなかった老齢のわたくしは、その時刻、式が行われているだろう空間へと思いをはせながら、さる日刊紙のため、映画作家としての彼の特異な魅力と思いもかけぬ素晴らしさをあれこれ書き続けていたのだが、つもる思いとそれを伝えようとする言葉とが、新聞特有の行数と字数の制限に阻まれてひたすら空転するしかなく、思うように筆が進むはずもない。だから、その