この連載では、わたしたちヒトが持っている色覚の多様性について考えます。 色の見え方は、人それぞれです。それらは長い進化の歴史の中で培われたもので、優劣ではありません。それぞれの色覚タイプに長所と短所があり、相補うものだと分かってきています。つまり「みんな違って、みんないい」のです。 でも、お互いに違う見え方があるなら、それがどんなものか知りたいと思いませんか? まずはその素朴な疑問を追求しようと思います。 「正常」「異常」で語られてきた問題点をふまえる ただ、単に素朴な疑問だけでは済ませられない部分もあります。 20世紀を通じて、また、21世紀になってもつい最近まで、ヒトの色覚の多様性を「正常な色覚」「異常な色覚」というふうに分けて考える時代が長く続いてきました。「色覚多様性」は生物学の概念ですが、医療の分野(眼科)で診断をつける場合には、今も「正常」に対して「先天色覚異常」という言葉が使