やはり、石破茂は正直者だった。 人事は、会社でも役所でも最も難しい仕事の一つで、人事が下手な会社や役所は、衰亡してしまい、やがて消えてなくなる。だから、大企業でも中央官庁でもエリートが人事部に配属される。それでも誰もが納得する人事なんてあり得ないのは、言わずもがな。まして人事部のない永田町では、時の権力者の一存で大臣や党幹部が決まるため、選から漏れ、冷や飯を食わされた政治家の恨みは凄(すさ)まじいものがある。 「悪党」でなかった石破茂冷や飯を食わされ続けた政治家が、臥薪嘗胆(がしんしょうたん)して権力を握ると、「恨みはらさでおくべきか」という心境になるのもよくわかる。 新首相は、暗殺された元首相・安倍晋三を「国賊」呼ばわりして処分を食らった村上誠一郎を重要閣僚に据え、最盛時には100人を数えた旧安倍派からは誰一人として大臣にも党四役にも登用しなかった。絵にかいたような「報復人事」で、ここま