【精進(2)】 ■ミケランジェロは、歴史に残る彫刻や絵画を多数残した、 まさに「天才」と呼ぶにふさわしい芸術家ですが、 こんな話があります。 ある日、彼のアトリエを訪れた友人に、制作中の石像を指して、 「ここを見てごらん。少し深く彫ってみたんだよ。 ここはね、線にふくらみを持たせてみた……」 と、夢中になり、延々と語り始めました。 ところが友人には、先日の石像とどこがどのように変わったのか、 皆目分かりません。 こんな誰にも分からない個所を何日もかけてこだわっているよりも、 その間にもう一つ製作したら、彼ほどの大家の作品、 どれだけ能率が上がるか、と、 彼のしていることが才能の無駄遣いのように感じたのでしょう。 つい言ってしまいました。 「あまり細かい部分に日数をかけるのは、意味がないのではないか。 そんな時間があったら、別の作品に取り組んだほうがいい」 ミケランジェロは、うつむき加減にち