人の精神神経疾患に使う抗不安薬薬は、動物の医療では検査や麻酔補助、あるいは簡単な外科的処置の目的で用いられてきました。しかし、最近これらの中のいくつかの薬が動物の問題行動の矯正に有効であることが次第に分かってきました。ヨーロッパやアメリカでその試みが始まり、日本でも注目されています。 ■1 犬の問題行動 犬の問題行動の中で最も一般的で、また厄介なのが「吼え癖」だと思います。特に、住宅環境の悪い日本の都市部では深刻な問題です。犬が吼えるのは縄張りを守る、あるいは誇示するためで、他者が侵入してくるのではないかとの不安に根ざした行動ともいえます。飼育場所を屋外から屋内に移し、他人や他の犬との接触を断てば解決しますが、なかなかそうはいきません。これを矯正するしつけをするのは有効ですが、これとて限界があります。 次に問題なのが、犬の攻撃性です。犬の攻撃性は大部分は防衛本能から来るもので、自分が攻撃さ