第2章:パンク・ロック創世記、そして、あっという間の黙示録7:そしてパンクが終わって、ロックが終わるピストルズは「カネの成る木」 ロナルド・アーサー・ビッグズは、このとき48歳、逃亡中の犯罪者だった。イギリスでは「大列車強盗(Great Train Robbery)」の名で知られる事件の、強奪犯の一員だ。63年、ビッグズを含む15人が、バッキンガムシャー州メントモアはレッドバーンの鉄道橋プリデコ橋にて、グラスゴーからロンドンに向かって走る郵便列車を襲い、現金およそ260万ポンドを奪った。 もっとも、ビッグズの役割は小さかった(代わりの機関士を連れてくる、というもの)。そんな彼が、一躍この強盗団の代名詞のごとき存在となったのは、服役後に脱走したからだ。65年7月にワンズワース刑務所を破獄、それからパリ、オーストラリアの各地を転々としたあと、ブラジルはリオデジャネイロに潜伏。そのときどきにマス