取材ノート ベテランジャーナリストによるエッセー、日本記者クラブ主催の取材団報告などを掲載しています。 「印象に残る世界の指導者は?」 私の質問に田中角栄元首相、角さんは間髪入れず答えた。「周恩来だ」。「どんな点にですか?」とたたみかけると「官僚を束ねられる政治家だ」。 1983(昭和58)年9月。東京・目白の田中角栄邸応接間。いつものように午前11時45分、早朝からの陳情時間が終わった。私も帰り支度をしていたとき、偶然に最後の客を玄関先に送りに出てきた角さんから声が掛かった。「飯食っていけ。店屋物(出前)でいいか。チャーハンがいいな」。思いもよらぬ誘い。それから1時間、幸運な2人きりの昼食となった。だが角さんにとっては、1カ月後に5億円受託収賄罪に問われたロッキード事件の一審判決が迫る、緊迫した時だった。 食事を取りながら、問わず語りに角さんが口を開いた。 「日中の国交回復は裏安保なんだ
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