先日、新聞の投書欄を何気なく見ていたら、『「全然」浸透 違和感残る』という投書が目に飛び込んできた(「東京新聞」8月26日朝刊)。投書の内容は、NHK教育テレビのこども番組の歌に「全然大丈夫」という歌詞があるが、「全然」の正しい用法は「全然何々ではない」と否定形で受けなければならず、番組の担当者はチェックをしているのだろうか、というものであった。 別に、NHKの肩を持つわけではないのだが、「全然」は否定の言い方でなければならないという根拠は歴史的にみると存在しない。 「全然」の本来の意味は、「残るところなくすべて」という意味で、あとに肯定・否定どちらの表現も使われていたのである。 たとえば、 「腹の中の屈托(くったく)は全然飯と肉に集注(しゅうちゅう)してゐるらしかった」(夏目漱石『それから』) の例は、肯定形で「すべて」という意味なのである。 では、多くの人が違和感をもつのは