松下のものづくりが変わった 「負けない商品は作っていた。だが、勝てる商品を作っていたのかと言われれば、それができていたとは言えなかった」 かつての松下電器のものづくりを、ある社員はこう表現した。 負けない商品とは何か? 「社内には『他社が良い商品を投入しても恐れることはない。少し遅れても、同じような商品を作れば、松下のブランド力でそこそこの数は売れる』という意識が蔓延(まんえん)していた。価格設定がちょっと高くても売れた。トップシェアにはならなくても、ある程度満足できるシェアを獲得できる。そんな安心感が社内にはびこっていた」 一定のシェアを取れる商品。これが負けない商品の定義であった。 だが、これでは、しょせん他社の後追いである。市場をリードする商品とはなり得ない。つまり、市場を創造したり、他社を圧倒的に引き離すことができる「勝てる商品」を創出する意識が社内には希薄だったのであ