雪の季節になると、必ずページを開きたくなる本があります。「100万回生きたねこ」(作・絵 佐野洋子 講談社)と「星の王子さま」(サン=テグジュペリ 新潮文庫ほか)です。この何十年、毎年この季節にだけ読み返している、宝物みたいな2冊。意味や答え、成果ばかりを求めてきた大人の愚かさを、初雪みたいな淡い純白で覆ってくれる物語の世界は、紙の感触を指に感じてページをめくる人にのみに訪問が許される特別な世界。文字こそ少ないですが、無駄が削がれた骨格は余白に満ちて清澄で、かすかな緊張感を備えて力強く時代を超えてきたのです。 Contents. いつか終わりが来るいのち かけがいのないものの意味 大人の孤独と夢との出会い いつか終わりが来るいのち 「100万年も しなない ねこが いました」 で始まる「100万回生きたねこ」は、死んではまた生き返ることを100万回も繰り返したねこの話です。 ねこにはいつも