2018年1月12日の東洋経済オンライン記事「安倍政権は財政推計の『粉飾』を始めるのか」で報じた懸念が現実ものになった――。内閣府が1月23日に公表した「中長期の経済財政に関する試算」(以下、財政試算)は、前回までの財政試算と前提条件を大きく変え、内容が変化した。今後、安倍晋三政権が財政健全化計画見直しの議論を本格化させる中で、最新試算のどこが問題なのかを整理しておこう。 最新試算の結果を簡単にまとめると、試算の「上限」が若干悪化し、「下限」が大幅に改善したと言える。上限とは、アベノミクスの成功と高い経済成長を前提とする「成長実現ケース」、下限とは、足元の潜在成長率並みの経済成長を前提とする「ベースラインケース」だ。内閣府がこの2つの経済シナリオに沿ってPB(基礎的財政収支)と公債等残高の将来予想値を発表するのは、結果がこの上下限の予想値の間のどこかに高い確率で着地するであろうことを意識し