「不安もある」。二十二日夜、長野原町を訪れた前田武志国土交通相から「建設継続」の報告を受けた後も高山欣也町長は手放しで喜ばなかった。 民主党の前原誠司政調会長は直前まで「ダム本体工事の来年度予算計上は認めない」と言い張っていた。それを振り切って、前田氏は建設再開を表明。与党と政府が激しく対立する異例の状態を不安がるのも無理はない。 二十三日に開かれた政府・民主三役会議で、党側は建設継続を容認はしたが、火種は残る。党県連の中島政希会長代行は「断じて容認できない」と反対を貫く。県議会で建設に反対してきた角倉邦良氏(リベラル群馬)も「あのような危険な土地でダムを造らせてはいけない。引き続き安全性を追及する」と力を込める。
福島第一原発で事故が起きた当初、政府が放射性物質の拡散をシミュレーションしながら公表しなかった問題で、文部科学省は二十三日、省内の対応を検証した中間報告を発表した。公表が遅れた理由について関係者に聞き取りするなど十分な分析をした形跡はなく、単に全職員から募った意見を並べただけ。「検証」というにはずさんな内容となっている。 文科省は十月、政務官をリーダーに検証チームを編成。緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム「SPEEDI」を百二十億円を投じて開発、運用していたのに、福島県民の安全な避難につながらなかった問題を検証するはずだった。 しかし、中間報告書では「当初は放射性物質の放出量が仮定したものだったことなどから公表されなかった」と、これまで政府と東京電力の統合対策室の会見などで出た説明を簡単に記載。事故直後の公表の是非を誰がどのように判断したかには触れないまま「放出量が分からなくても
「冷温停止状態」を通り越し「事故収束」にまで踏み込んだ首相発言に、福島第一原発の現場で働く作業員たちからは、「言っている意味が理解できない」「ろくに建屋にも入れず、どう核燃料を取り出すかも分からないのに」などと、あきれと憤りの入り交じった声が上がった。 作業を終え、首相会見をテレビで見た男性作業員は「俺は日本語の意味がわからなくなったのか。言っていることがわからない。毎日見ている原発の状態からみてあり得ない。これから何十年もかかるのに、何を焦って年内にこだわったのか」とあきれ返った。 汚染水の浄化システムを担当してきた作業員は「本当かよ、と思った。収束のわけがない。今は大量の汚染水を生みだしながら、核燃料を冷やしているから温度が保たれているだけ。安定状態とは程遠い」と話した。
福島第一原発事故で、何度も放射性物質を含む汚染水が海に漏出したが、経済産業省原子力安全・保安院は「緊急事態」を理由に、法的には流出量は「ゼロ」と扱ってきたことが本紙の取材で分かった。今後、漏出や意図的な放出があってもゼロ扱いするという。政府は十六日に「冷温停止状態」を宣言する予定だが、重要な条件である放射性物質の放出抑制をないがしろにするような姿勢は疑念を持たれる。 原子炉等規制法により、電力事業者は、原発ごとに海に出る放射性物質の上限量を定めるよう決められている(総量規制)。福島第一の場合、セシウムなどは年間二二〇〇億ベクレルで、年度が変わるとゼロから計算される。
経済産業省原子力安全・保安院が、東京電力福島第一原発1号機の原子炉系配管に事故時、地震の揺れによって〇・三平方センチの亀裂が入った可能性のあることを示す解析結果をまとめていたことが分かった。東電は地震による重要機器の損傷を否定し、事故原因を「想定外の津波」と主張しているが、保安院の解析は「津波原因説」に疑問を投げかけるものだ。政府の事故調査・検証委員会が年内に発表する中間報告にも影響を与えそうだ。 これまでの東電や保安院の説明によれば、三月十一日午後二時四十六分の地震発生後、1号機では、非常時に原子炉を冷やす「非常用復水器(IC)」が同五十二分に自動起動。運転員の判断で手動停止するまでの十一分間で、原子炉内の圧力と水位が急降下した。この後、津波などで午後三時三十七分に全交流電源が喪失し、緊急炉心冷却装置(ECCS)が使えなくなったため、炉心溶融が起きたとされる。 一方、経産省所管の独立行政
一九八九年に大量の人骨が見つかった東京都新宿区戸山の旧陸軍軍医学校跡地で、財務省が年明けにも発掘調査を始める。軍医学校の元看護師の女性が「人体標本が埋められた」と証言した三カ所の一つで、市民団体が調査を求めていた。中国で人体実験をしたとされる「七三一部隊」との関連が指摘されてきたが、真相究明につながる可能性もある。 現場は、財務省が管理していた国家公務員宿舎跡で、八九年に国立感染症研究所を建設中、大量の人骨が発見された場所の近く。当時は新宿区の鑑定で「人骨は百体分以上」「日本人とは異質とみられる人種が含まれ、ドリルや銃の跡がある」-などの見解が示された。軍医学校には七三一部隊の日本での研究拠点もあったが、人骨との関連は分かっていない。 研究所用地とともに三カ所の一つだった厚生労働省宿舎跡は、今年二~六月に同省が調査し、人骨は見つからなかった。三カ所目となる今回の現場は、元看護師が「人体標本
存廃が議論される高速増殖原型炉「もんじゅ」(福井県敦賀市)をもじったキャラクター「もんじゅ君」がツイッターに登場、人気を集めている。書き込みをしている人物は実名を明らかにしていないが、フォロワー(読者)は七万七千人余りと有名人並みだ。
太平洋戦争の分岐点になったガダルカナル島の攻防戦では、約三万人の日本の将兵のうち二万人が犠牲になった。七割が餓死や病死である。一九四三年二月、大本営は敗北した事実を隠して、所期の目的を達して転進した、と発表した▼これ以降、日本軍が太平洋の拠点から撤退した時に、新聞では「転進」が使われるようになる。部隊が全滅した時は「玉砕」に。軍部と新聞は言葉を言い換え、国民の目をそらした▼同じようなことが今、政府や東京電力の記者会見で起きている。事故やトラブルの危険性を小さく見せるために「事象」という言葉を連発。記者が原発の「老朽化」に言及すると「高経年化」と言い直すと、本紙記事が報じていた▼原子力建屋の中にたまった高濃度の放射能汚染水は「滞留水」。これでは危険性は伝わるわけがない。極め付きは、正常な原子炉を定期検査で止める時などに使う「冷温停止」に「状態」を付けた「冷温停止状態」だろう▼事故が収束に向か
【ワシントン=久留信一】「日本の元政府関係者からガイアツを頼まれた」。米通商代表部(USTR)のカトラー代表補は二日、環太平洋連携協定(TPP)への日本の参加問題で、日本政府OBからの働き掛けがあったことを明かした。 野田佳彦首相が、TPP交渉参加に向けて関係国と協議に入る方針を表明した十一月十一日までの国内協議の最中、数人の元日本政府関係者が訪ねてきて同代表補に「少しガイアツをかけて、TPP参加が日本にとってよいことであると伝えてもらえないか」と、TPP参加を日本に促す働き掛けを求めたという。代表補は、関係者の具体名は明らかにしなかった。 同代表補は要請について「日本経済の将来にかかわるような大きな決定に、通商相手国がどうこう言うべきではない」との判断を強調。「米政府は日本の国内協議に一切介入しなかった。決定は日本自身の決断だ」と述べた。
日本原子力発電(原電)は二十五日、東海第二原発(東海村)の二基ある復水貯蔵タンクの容量を一九七八年の運転開始から、どちらも実際の六百五十六立方メートルよりも十四立方メートル多い設定で運転していたと発表し、経済産業省原子力安全・保安院に訂正内容を提出した。計測の基点を誤ったのが原因という。 復水貯蔵タンクは、タービンを動かした蒸気を再び水に戻して原子炉や使用済み燃料プールに送る施設で原発の生命線である冷却機能の一部を担う。原電は「誤っていた水量そのものは多くなく、大きな影響はない。正しい数値で修正した」としている。
高い放射線量を検出した、2つの建物のすき間。学童保育施設(右)の屋根の雨水が、すべてここに集まる構造だった=荒川区で 荒川区立汐入小(南千住)敷地内で毎時六・四六マイクロシーベルトの放射線量を検出した問題で、区内すべての小中学校と幼稚園、保育園で区が測定した結果、同小を含む五十カ所で、区の除染基準である地表で毎時〇・二三マイクロシーベルト以上だったことが分かった。保護者からは「高い数値に驚いた」と不安の声が出ている。
東京・霞が関の経済産業省庁舎前(千代田区)など都内三カ所の路上に堆積していた泥から、微量の放射性ストロンチウムが検出されたことがわかった。福島第一原発から約二百五十キロとより遠い横浜市港北区のマンション屋上の泥などからも十月中旬に確認されている。ストロンチウムについて文部科学省は同原発から半径百キロ圏内でしか土壌調査しておらず、専門家などから調査範囲の拡大を求める声が上がっている。 調べたのは、港北区の自宅マンション屋上でストロンチウムを突き止めた教員男性(38)らの住民グループ。 十月上旬、経産省前のほか、東京国際フォーラム前(千代田区)と都営地下鉄清澄白河駅前(江東区)にたまった土壌を採取し、横浜市鶴見区の民間検査機関・同位体研究所に測定を依頼した。 検査結果によると、ストロンチウムは一キログラムあたり最大が東京国際フォーラム前で五一ベクレルを検出。経産省前が四八ベクレル、清澄白河駅前
東日本大震災の影響で千葉県の今年の人口が、統計が残る一九二〇(大正九)年以降初めてマイナスに転じる見通しとなった。九月末時点で、五カ月連続の減少となり、一月から五千人以上も減っている。震災に伴う液状化の被害などで、県外への人口流出が続いていることが要因として挙げられる。 首都圏では、東京都内で地価高騰の影響により人口減少に歯止めがかかった九五(平成七)年以降、東京、神奈川、埼玉、千葉の一都三県では人口増加が続いていた。 千葉県の人口は、毎年二万~三万人超の増加が続いており、昨年末時点では、六百二十一万七千八百五十七人だった。今年は震災直後の四月こそ約二千人増えたが、五月からは減少続きで、九月末時点では昨年末より五千二百七人少ない六百二十一万二千六百五十人に。これから残り三カ月の増減を見込んでも昨年末を下回るのは確実な情勢となった。
電気料金制度を見直す経済産業省の有識者会議(座長・安念潤司中央大教授)は二十二日の会合で、財団法人への拠出金や広告宣伝費などは、電気料金を決める際の原価に算入を認めないことで合意した。 こうした点を盛り込んだ報告書を来年初めまでにまとめ、枝野幸男経済産業相に提出。来春にも、電気料金の運用が変更される可能性が高い。 電力会社は、さまざまな費用を積み上げ、「総括原価方式」と呼ばれる方法で電気料金を決めている。費用の中には、天下りを受け入れている財団法人への会費や自治体への寄付、業界団体への拠出金、広告費など発電とは関係のない支出も数多く含まれ、問題視されてきた。 二十二日の会合では「広告費や寄付金はかなり政治的な目的で使われている」など、消費者の不利益になっているとの意見が大勢を占めた。 安念座長は、電力会社が、会費や寄付金などを発電に不可欠だと証明しない限り、原価への算入を認めないよう、経産
原発の損害賠償保険を引き受けるため、損害保険会社でつくっている「日本原子力保険プール」(日本プール)が、東京電力福島第一原発に対する損害保険の契約を更新しない方針を固めたことが分かった。東電は契約が切れる来年一月十五日までに、保険の引き受け手を見つけたり、保険額(千二百億円)相当の現金を供託したりしないと、福島第一が無保険の「違法状態」となる。 すべての原発は、事故が起きた場合に千二百億円を上限に賠償金が支払われるよう、保険加入などが原子力損害賠償法(原賠法)で義務づけられている。これを怠ると、原発は稼働できない。 地震や津波の場合は政府補償が適用されるが、問題になっているのは運転ミスによる事故などをカバーする民間保険の部分。 福島第一で加入している民間保険は来年一月十五日に契約が終わるが、日本プールは、炉心溶融などの重大な事故を起こした福島第一は、落ち着いてきたとはいえ、通常の原発とは比
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