「交通」から見たアジア史。 文明の原動力を、陸塊の形態に還元したマクロ史観の大胆な試みとして、ジャレ・ド・ダイアモンド『銃・病原菌・鉄』[レビュー]があるが、宮崎市定『アジア史概説』は、これを「交通」に還元して俯瞰する。西アジアのペルシア・イスラム文明、東アジアの漢文明、その間のインドのサンスクリット文明、そして東端の日本文明───各文明は互いに交通という紐帯によって緊密に結び付けられており、相互に啓発しあい、競争しあい、援助しあいながら発展してきたダイナミズムを、一気に、一冊で読み通すことができる。 あたりまえなのだが、ざっくり歴史を古代/中世/近世と分けるとき、文明は軌を一つにして変遷しない。にもかかわらず、西洋史のスケールに囚われてしまい、アジアの各文明とのタイムラグを見落としてしまう(もちろん、ヨーロッパが最も「遅れて」いた)。現代を“支配”している欧米の価値観で振り返るとき、この