無能と失敗の社会学 作者:小谷 敏 高文研 Amazon 本書を貫くキーワードは「訓練された無能力」という言葉である。本書は、この「訓練された無能力」をキー・コンセプトとした現代社会の分析、と要約できる。 しかし、この言葉は、多くの人にとっては非常に奇異に聞こえる言葉であろう。ふつう「無能力」というのは、訓練されていない状態を指す言葉だからである。なのに、訓練された結果無能力になる、というのはどういうことか、と。 著者によると、この言葉はもともとソースタイン・ヴェブレンの言葉で、それをロバート・マートン(アメリカの社会学者)やケネス・バーク(アメリカの文芸批評家)といった人々により援用され、発展していった言葉だという。実例は以下の通りである。 バークが「訓練された無能力」のわかりやすい例としてあげているのが、ベルが鳴ると餌がもらえると条件づけられた鶏たちが、ベルの音におびき寄せられて集まり