プロジェクターにはiphoneが映っていた。 ジョブズはその前を歩きながらつぶやくように言った。 ーーこれをどうやって操作する? スタイラス? ノー。 スタイラスはダメだ。 観客から笑い声が聞こえた。 またいつものジョブズ節が始まったぞ、と誰かが言った。 ーースタイラスは操作しにくいし、すぐに無くしてしまいそうだ。 ではどうする? 答えは簡単だ。すでに『それ』は私たちが持っている。 指だ。 そしてそれは正しかった。 まるで魔法のように操作しやすく、デジタルデバイスは私たちの意のままに動いた。 細かいスイッチを神経質に押す必要は無い。 QWERTYなどという意味不明な配列のキーボードに苛立つ必要は無い。 不要なショートカットキーを配置する必要は無い。 そんな、魔法のデバイスに唯一弱点があるとすれば、それは文字入力の不便さだった。 QWERTYキーボードは、初心者にとっては狂気の文字入力デバイ