報道では患者はいつも「かわいそうな被害者」だ。病院側の事情は一切考慮されず、どんな状況であっても患者をすべて受け入れ、ミスを犯してはならないと迫られる。1999年に発生した「割り箸死」事件報道を振り返って、ジャーナリストの黒岩祐治氏が検証する。****************************** 11年前、転倒した4歳の保育園児が割り箸を喉に刺して死亡した事故。その第一報を受けて、当時、夕方の『FNNスーパーニュース』(フジテレビ系)のキャスターだった私は、怒りを込めて次のようにコメントした。「どうしてドクターはCTスキャンなどしなかったんでしょうね。信じられませんね。そういう基本的なことさえキチンとしていればこんなことにはならなかった。ご遺族の気持ちを思うといたたまれないですね」 それから9年後、いったん逮捕された担当医師の無罪が確定した。私のコメントは的外れだったことになる。