ブックマーク / huyukiitoichi.hatenadiary.jp (9)

  • 何千時間も使って未解決事件を解決しようと奮闘する人々──『未解決殺人クラブ~市民探偵たちの執念と正義の実録集』 - 基本読書

    未解決殺人クラブ~市民探偵たちの執念と正義の実録集 作者:ニコル・ストウ大和書房Amazon市民探偵というと日でイメージとして上がるのは毛利小五郎(with/江戸川コナン)か金田一あたりだろうが、実は世の中には多種多様な市民探偵が存在する。 事件現場にかけつけたり、たまたま居合わせたりして事件を解決するのではなく、市民探偵の多くはインターネットで公開された情報を集め、フォーラムで議論をしながら事件解決への糸口を探す。やっていることは地味な行為の積み重ねだが、解決にあたって重要な役割を果たすことも多い。確かに彼らも市民探偵なのだ。 その執念の凄まじさは、おそらく多くの読者の想像を超えたものだ。たとえばテネシー州の元工場労働者トッド・マシューズは、両目を失い腐敗した状態で大きなバッグに入れて放置されていたことから「テント・ガール」と呼ばれていた身元不明の女性を、11年にもわたって調査して、最

    何千時間も使って未解決事件を解決しようと奮闘する人々──『未解決殺人クラブ~市民探偵たちの執念と正義の実録集』 - 基本読書
  • 現代韓国のSF作家らに多大な影響を与え、韓国SFの代名詞と言われる作家ペ・ミョンフンの代表作──『タワー』 - 基本読書

    タワー 作者:ペ・ミョンフン河出書房新社Amazonこの『タワー』は、韓国を代表するSF作家の一人ペ・ミョンフンの代表作といえる連作短篇集だ。最初、それ以外の前情報は一切仕入れずに読み始めたのだが、すぐに面らってしまった。いったいこれは何の話なんだ……? と。舞台は674階建て、人口50万人にもおよぶ巨大タワー「ビーンスターク」。その時点で異様な存在だが、その中では地上では理解もつかぬ人々とその行動が展開するのである。 東方の三博士──犬入りバージョン たとえば一篇目の「東方の三博士──犬入りバージョン」ではビーンスタークミクロ権力研究所のチョン教授が、酒に電子タグをつけてタワーの上流社会に流通させ、それがどこに贈られていくかで権力構造を把握しようとする実験が語られていく。 イ博士はミクロ権力研究所に入ってもう三年めだった。彼はチョン教授の話を聞くたびに、こいつは天才なのかいかさま師なの

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  • 早川書房の1500作品が50%割引の大型電子書籍セールがきたのでオススメを紹介する - 基本読書

    三体Ⅱ 黒暗森林(上) 作者:劉 慈欣早川書房Amazon早川書房の1500作品が最大50%割引という大型の電子書籍セールが来たので、僕が読了済みのものからオススメの作品を一部紹介してみよう。早川書房は定期的に電子書籍セールをやるが、前回の大規模なものは確か2020年3月頃の1000点セールだったので、セール対象は増えていることになる。なんと、先日完結したばかりの『三体』も、さすがに完結巻は対象ではないけれども第二部までがセール対象。 amzn.to まずはSFから紹介する。 三体 作者:劉 慈欣早川書房Amazonまずは早川といえばSFということで、SFから紹介してみよう。目を引くのはやっぱり『三体』である。先日三部作全体の紹介を書いたばかりだが、文化大革命からはじまり異種知性とのファースト・コンタクトが描かれる比較的現実路線の一巻。ファースト・コンタクト後、人類最高峰の知性が異種知性に

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  • 数万の兵力に匹敵する能力者同士が世界の覇権をめぐってしのぎを削る、てんこもりのファンタジー能力者戦記!──『隷王戦記1 フルースィーヤの血盟』 - 基本読書

    隷王戦記1 フルースィーヤの血盟 (ハヤカワ文庫 JA モ 7-1) 作者:森山光太郎発売日: 2021/03/17メディア: 文庫この『隷王戦記』は、時代小説大賞を2018年に『火神子 天孫に抗いし者』で受賞しその後メディアワークス文庫だったり朝日新聞出版だったりとぽんぽん時代・戦記物を刊行してきている期待の新鋭森山光太郎の最新作である。ジャンルとしては特殊な力の存在する異世界戦記物といったかんじで、早川書房ではもちろん初お披露目、それでいきなり単巻物じゃなく全3巻のシリーズということで、気合が入っている。 SFマガジン編集長の塩澤氏も何がなんだかよくわからないがとにかくすごそうな絶賛をしていて*1期待しながら読み始めたのだけれども──これはたしかにめちゃくちゃおもしろい! いまこんな異世界戦記が読めるとは。著者はあとがきで、田中芳樹の『銀河英雄伝説』や『アルスラーン戦記』、北方謙三の三

    数万の兵力に匹敵する能力者同士が世界の覇権をめぐってしのぎを削る、てんこもりのファンタジー能力者戦記!──『隷王戦記1 フルースィーヤの血盟』 - 基本読書
  • 『三体』の劉慈欣が「近未来SF小説の頂点」とまで言った、ページをめくる手が止まらない圧巻の中国SF──『荒潮』 - 基本読書

    荒潮 (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ) 作者:陳 楸帆発売日: 2020/01/23メディア: 新書この『荒潮』は中国のSF作家を代表する一人と言われる陳楸帆による初の(そして今のところ唯一の)長篇SF小説である。陳楸帆の小説は、日でも刊行された現代中国SFアンソロジーである『折りたたみ北京』にも短篇「鼠年」が載っている。 この「鼠年」は、中国で遺伝子改造されたラットの逃亡と、その駆除隊に入った底辺層の駆除隊の青年を通して中国社会の苦境と世界を支配するゲーム・ルールを描き出していく、ローカル性とグローバル性が適度にブレンドされ、そこからさらにSFならではの情景に繋がっていく圧巻の短篇で、アンソロジー全体の中でも群を抜いておもしろかった。また、この『荒潮』は英語や、原語で読んだ人の評判もずば抜けて高く、最初から期待していたのだが──、実際読んでみたらこれがもうめちゃくちゃおもしろい! 久し

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  • 二年連続でヒューゴー賞・ローカス賞を受賞した、自省的な人型殺人警備ユニットの日常録──『マーダーボット・ダイアリー』 - 基本読書

    マーダーボット・ダイアリー 上 (創元SF文庫) 作者:マーサ・ウェルズ出版社/メーカー: 東京創元社発売日: 2019/12/11メディア: 文庫マーダーボット・ダイアリー 下 (創元SF文庫) 作者:マーサ・ウェルズ出版社/メーカー: 東京創元社発売日: 2019/12/11メディア: 文庫この『マーダーボット・ダイアリー』はマーサ・ウェルズのSFアクション連作中篇集である。上下それぞれに二篇の中篇が収められていて、特に上巻の「システムの危殆」はヒューゴー賞、ネビュラ賞、ローカス賞の各ノヴェラ部門を授賞。続く「人工的なあり方」もヒューゴー賞、ネビュラ賞を授賞と(賞的な意味で)評価の高い作品。 それにこの創元文庫版は安倍吉俊のイラストもあいまって刊行がたいへん待ち遠しかったんだけれども、読んでみたらこれが期待通りのおもしろさ! 全篇通して自分のことを一人称で「弊機」を呼ぶ人型警備ユニット

    二年連続でヒューゴー賞・ローカス賞を受賞した、自省的な人型殺人警備ユニットの日常録──『マーダーボット・ダイアリー』 - 基本読書
  • 中国だけで2100万部、話題性と本物のおもしろさを兼ね揃えたバケモノ級の中国SF──『三体』 - 基本読書

    三体 (ハヤカワ文庫SF) 作者:劉 慈欣早川書房Amazon『三体』とは! 中国の作家劉慈欣によって書かれたSF三部作の第一部目にして、中国国内だけで三部作累計2100万部を刊行し、さらに日でも人気のケン・リュウによる翻訳によってアメリカ歴史あるヒューゴー賞を受賞した傑作である。ヒューゴー賞受賞の何が凄いかと言うと、翻訳書としてははじめてのの受賞になるのだ。 それぐらい作品の内容が圧倒していたともいえる。で、あまりSFとは縁のなさそうなオバマやザッカーバーグも絶賛していたりとか、アニメ化が決定したりとか話題は尽きないんだけれども、とにもかくにもこれだけは覚えて帰ってもらいたいのは、この『三体』は、話題先行の内容はまあおもしろいね、いうほどじゃないけど的な軟弱な態度で読み終わる作品ではなく、その肥大化しきっているともいえる話題性に劣らない、圧倒的なおもしろさのある、純粋におもしろいSF

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  • エリート層に対する痛烈な批判──『エスタブリッシュメント 彼らはこうして富と権力を独占する』 - 基本読書

    エスタブリッシュメント 彼らはこうして富と権力を独占する 作者: オーウェン・ジョーンズ,Owen Jones,ブレイディみかこ,依田卓巳出版社/メーカー: 海と月社発売日: 2018/12/06メディア: 単行(ソフトカバー)この商品を含むブログを見るイギリス社会で富裕層が自らの利益を守るため、下層階級を敵視する階級闘争が存在していることを語った『チャヴ 弱者を敵視する社会』のオーウェン・ジョーンズによる最新邦訳である。今回は弱者側ではなくエスタブリッシュメント側から、彼らがいかにしてイギリス社会に不平等を撒き散らしているのかを歴史的観点、警察、メディア、財界と政界との関わり──などいくつかの側面からみていくことになる。 著者のオーウェン・ジョーンズは言ってみれば(1984年生まれで、チャヴを出した時はまだ20代の若さだが)古典的で強烈な左翼で、エスタブリッシュメントが支配する社会への

    エリート層に対する痛烈な批判──『エスタブリッシュメント 彼らはこうして富と権力を独占する』 - 基本読書
    riruriru-15
    riruriru-15 2019/01/07
    出てたんだ!
  • 最近イチオシの海外ファンタジィ──『風の名前』 - 基本読書

    風の名前 1 (キングキラー・クロニクル第1部) 作者: パトリックロスファス,中田春彌,山形浩生,渡辺佐智江,守岡桜出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2017/03/22メディア: 文庫この商品を含むブログ (5件) を見る書『風の名前』は、キングキラー・クロニクルと名付けられた現代ファンタジィ三部作の第一部になる。もともと日では2008年に白夜書房から三部作で出ており、書はそれを五冊に分冊したものだ。なんでもシリーズ、映画が制作が進行している上に、オリジナルプロットとなるTVシリーズ版も同時に制作しているとか。 国では2011年に第二部が出て、2017年に第三部が出るとか出ないとかいう話で、再刊行するにはちょうどいいタイミングだったのだろう。個人的に、日のファンタジィが量もあるし質も高いしで、海外ファンタジィには乗り切れないことも多いんだけど*1、書はきちんとその個性

    最近イチオシの海外ファンタジィ──『風の名前』 - 基本読書
    riruriru-15
    riruriru-15 2017/07/22
    面白いのだけど、恋愛要素の部分があまり気持ち入らなくて…あのヒロインそんなに魅力的かなあ。
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