要旨 理化学研究所(理研)小林脂質生物学研究室 小林俊秀主任研究員および上田善文客員研究員らの研究チームは、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)[1]を基にしたジアシルグリセロール(DAG)[2]蛍光プローブを用いることで、細胞内膜の裏側(外層:ルーメン側)のDAGを、表側(内層:細胞質側)のDAGとは独立かつリアルタイムに観察することに成功しました。 細胞膜をはじめとした脂質二重膜の表裏では、その脂質組成は非対称です。細胞は、この非対称性を巧妙に利用してアポトーシスや細胞の凝集などの細胞応答を制御します。機能性脂質分子の一種であり、異常な増加によって癌やアルツハイマー病などを引き起こすDAGは、細胞内膜の細胞質側とルーメン側に存在するため、両方の動態を明らかにすることが求められていました。しかし、従来の手法では、ルーメン側のDAGを観察することは不可能だったため、新たな測定手法の開発が求め