—東工大は、「量子科学技術」に注力する方針を打ち出しました。量子科学技術とはどのようなもので、今、なぜ量子科学技術への期待が高まっているのでしょう。 岩附:「量子」とは、粒子と波の性質を合わせ持った、とても小さな物質やエネルギーの単位のことです。物質を形作っている原子や、原子を形作っているさらに小さな電子、中性子、陽子といったものが代表選手です。光を粒子として見たときの光子やニュートリノ、クォーク、ミュオンといった素粒子も量子に含まれます。 岩附信行工学院長 量子の世界は、ナノサイズ(1メートルの10億分の1)あるいはそれより小さなミクロの世界です。このような極めて小さな世界では、ニュートン力学※1は通用せず、「量子力学」というとても不思議な法則に従います。量子力学は約100年前に誕生しましたが、物理学のみならず、「物質とは何か」「測定することはいかなることか」など哲学的な面でも大きな影響