ミステリー評論家でもある稲塚由美子(「隣る人」工房)が厳選した世界で出版されているミステリー小説の書評。 ある事件が起こる。その事件の背景には、登場人物たちが生きる社会状況や歴史が色濃く反映している。ミステリーを通して、わたしたちがいま生きる社会(世界)を読み解いていく。 2024年4月13日 『厳冬之棺≪げんとうのひつぎ≫』(中国・日本) 中国発、「密室の王」と称される短編ミステリー作家・孫沁(スンチン)文(スンチンウェン)の長編デビュー作である本書は、凝りに凝った「密室トリック」本格謎解き小説だった。しかも、横溝(よこみぞ)正史(よこみぞせいし)(せいし)ばりの、田舎の因習に満ちた一族の物語が背景にあり、非常に心惹かれる…