避難所での生活が長期化する中、被災者の飲酒を巡るトラブルが起きている。95年の阪神大震災では、家や仕事を失った被災者がアルコール依存症に陥るケースが多数報告された。今後、仮設住宅への入居が進むとともに、周囲からの孤立化が酒への依存を高める懸念もある。専門家は「新たな依存症者を出さないための継続的なケアが必要」と指摘している。【曹美河】 岩手県沿岸の避難所で5月中旬、酒に酔った60代男性が周囲に物を投げつける騒ぎがあった。男性は独身で、自宅を流され1人で避難所に身を寄せていた。それまで目立ったトラブルはなかったが、数日前から酒の量が増え、ささいなことで周囲と口論になっていた。「長年酒を断っていたのに、むしゃくしゃして飲み始めてしまった」。男性は避難所を巡回する医師にこう説明したという。 国立病院機構「久里浜アルコール症センター」(神奈川県)の松下幸生精神科医によると、震災による心的外傷後