子どもの貧困対策推進法などが自治体に求める実態把握に関し、本紙が全国四十七都道府県と二十政令指定都市にアンケートしたところ、約九割が困窮層の割合を示す「子どもの相対的貧困率」の調査を実施せず、具体的な予定もないことが分かった。既に調査した自治体は沖縄県だけで、大半の自治体の消極姿勢が浮き彫りになった。 同法は深刻化する子どもの貧困の改善に向け二〇一四年一月に施行。内閣府などが、家庭の困窮に子どもが巻き込まれている実態を研究・把握し、対策を講じるよう自治体に求めている。 全国の子どもの相対的貧困率は厚生労働省が三年ごとに調べており、一三年の調査で16・3%と過去最悪を更新した。ただ、全国で二万六千世帯を無作為に抽出した調査のため、自治体単位の数字が存在せず、専門家から「地域間の格差などの実態を踏まえた、きめ細かい対策にはつながらない」との指摘が出ている。 アンケートでは、子どもの貧困率
仕事のストレスが原因でうつ病などの精神疾患を発症したとして、労災を申請した介護職員が二〇一四年度までの五年間で二倍以上に増えたことが七日分かった。認定された人も三倍に増加し、業種別の順位もトップなどに上昇。慢性的な人手不足が続く介護業界の職場環境の悪化が浮き彫りになった。政府が一億総活躍プランで人材確保や処遇改善を掲げる中、メンタルヘルス(心の健康)対策の推進も求められそうだ。 厚生労働省の集計によると、介護を含む「社会保険・社会福祉・介護事業」の精神疾患の労災申請は、〇九年度の六十六人が一四年度に業種別トップの百四十人に増加。この五年間の増加率は二・一倍で全業種の一・三倍を上回った。 労災認定も〇九年度の十人から一四年度には三十二人に増え、全業種の認定数(一四年度は四百九十七人)の増加率(二・一倍)を超えた。業種別の順位でも、一四年度は運転手が多い「道路貨物運送業」(四十一人)に次ぐ二位
虐待を受けた子どもは二回、心の重荷を背負う。一回目は虐待そのものによる体や心の傷。二回目は大人から繰り返し事情を聴かれ、つらい経験を思い出してしまうことだ。せめて二回目の負担を和らげようと、これまで児童相談所(児相)、警察、検察が個別に面接していたのを、三機関の代表者が行う「協同面接」制度が始まろうとしている。神奈川県の医師の熱意が「縦割り行政」の壁を壊し、一歩を踏み出した。 (安藤美由紀) 神奈川県伊勢原市に今年二月開設した「子どもの権利擁護センターかながわ」。同市のNPO法人・チャイルドファーストジャパン(CFJ)が運営し、専門的訓練を受けたスタッフが虐待を受けた子どもから聞き取りをしている。協同面接はまだ実施されていないが、設備は整っている。 面接室は子どもと面接者が二人きりで話すため、一人掛けのソファを向かい合わせに設置。天井にカメラが据えられ、別室のモニターで視聴できる。別室から
ひとり親の女性が独身男性のいるシェアハウスなどに住んでいることで「事実婚」とみなされ、一部自治体で児童扶養手当が一時支給されなかった問題で、厚生労働省が生活実態に応じて支給を判断するよう求める運用の新たな課長通知を各都道府県に行ったことが分かった。事実婚かどうか判断に迷った実例として、厚労省の調査に都道府県と政令市から約百件の報告があったことも判明。通知では光熱水費を個別に負担しているなど、事実婚かどうか判断する基準も別紙で例示した。 事実婚の解釈は一九八〇年の厚生省(現厚労省)の課長通知以来、三十五年間見直されていなかった。通知は十七日付。都道府県を通じ支給を行う市区町村に適正な反映を要請した。 事実婚のひとり親は、生活を支援する異性がいることを理由に、手当の支給対象外になっている。事実婚の定義を八〇年の課長通知は「原則として同居を要件とする」「当事者間に社会通念上夫婦としての共同生活と
東京都渋谷区は二十六日、宮下公園など三つの区立公園を来年一月三日まで閉鎖した。宮下公園では年末年始にホームレスの人たちの支援団体が炊き出しを計画していた。区の担当者は「公園のルールとして火気厳禁。炊き出しをするなら利用は認められない」としている。 緑と水・公園課によると、閉鎖したのは宮下公園と、その近くの神宮通公園、美竹公園。吉武成寛課長は「炊き出し場所の移動が想定されるため」と話す。いずれも敷地はフェンスで囲まれ、通常は午後十時半に閉門し、翌朝午前八時半に開く。二十六日朝は閉鎖の掲示が掛かり、定時になっても開門しなかった。 宮下公園では「渋谷越年・越冬闘争実行委員会」が炊き出しを計画。昨年は公園内に宿泊用テントを設置して区から強制的に閉め出されたため、今年はガスコンロ二台で炊き出しのみを行う予定だった。メンバー約十人は二十六日、区役所を訪れ「命の危険に関わるから炊き出しをしている」と抗議
厚生労働省は十八日、改正生活保護法の実務の指針となる省令案を修正した上で公布した。厚労省が二月末に公表した省令案は、与野党による改正法の修正や政府側の国会答弁が反映されておらず、研究者や弁護士、NPO法人代表などがパブリックコメント(意見公募)に修正を求める意見を寄せるよう呼び掛けていた。集まった意見は千百六十六件に上り、厚労省は国民の声に動かされる形で、省令案を国会答弁や与野党修正に沿う内容に修正した。 (上坂修子) 改正生活保護法の政府原案は申請時に申請書の提出を義務付けたが、与野党で保護の決定までに提出すればよいと解釈できる表現に修正した。だが、厚労省が決めた省令案では政府原案の表現に戻されてしまい、そのまま公布されれば、与野党の修正が無視され、申請時の申請書提出が必要となるところだった。公布された省令は、法案の修正に沿ったものになった。 自治体が保護を始める時に扶養義務者に書面で通
政府の「規制改革会議」(議長・岡素之住友商事相談役)が待機児童対策として認可保育所の基準緩和を議論していることに対し、十七日、東京都と愛知県の五つの保護者グループがそれぞれ緩和に反対する意見書を内閣府の会議事務局と厚生労働省に提出した。「求めているのは子どもの詰め込みではなく、安心して預けられる保育の拡大。親の思いをゆがめないで」と訴えた。 (柏崎智子) 意見書を出したのは、認可保育所へ入所できず、東京都杉並区へ集団で異議申し立てした「保育園ふやし隊@杉並」(曽山恵理子代表)や、足立区で活動する「保育所つくってネットワーク」(斉藤真里子代表)、愛知県碧南市の認可保育所で一歳の長男を亡くした両親ら。
「子どもを持つなということか」。東京都杉並区役所前で十八日、赤ちゃんを連れた母親らが、我慢してきたつらい気持ちを涙ながらに吐き出した。妊娠中から保育所探しに歩き回り、育児休暇中も不安にさいなまれた揚げ句、預け先が見つからない。「認可保育所を増やしてほしい。現状のおかしさに気付いて」と訴えた。待機児童の多い都市部共通の、母の願いだ。 (柏崎智子、小形佳奈) 「大きなおなかを抱えた臨月から、保育園を回らなければならなかった。インターネットで区の保育事情を検索し、何日も不安で眠れなかった。貴重な育児休業中、何をしていても保育園の心配がついてまわり、本当に苦しかった。こんな目に遭うなんて知らない妊婦さんは、今も大勢いるんじゃないか」 十カ月の子どもの母親はマイクを握り、「保活」とも呼ばれる保育所探しのつらい経験を振り返った。認可保育所の入所の競争率が異常に高いため、母親らは子どもが産まれる前から認
地域力で子ども守れ-。子どもの養育が困難な家庭で児童虐待や育児放棄を防ぐため、子育てに関心のある住民が家庭を公費で手助けする「おとなりさんボランティア」が、東京都江戸川区で始まる。親の同意で家庭を訪れ、中学生以下の子どもに買い物や料理、掃除の仕方を教え、勉強や遊びの相談にも乗る。住民主体で支援を担うのは珍しい。 (村松権主麿) 「昔のように近所のおじさんやおばさんが地域の子どもを育てるイメージ」と区児童女性課。既にボランティア養成講座を開いており、昨年度は三十人が受講した。四月から新たに五十人を募集。受講を終えた人からボランティアを選ぶ。乳幼児がいる家庭には子育て経験がある人も派遣する。 まず問題の深刻度が軽い五家庭を対象に、新年度から週一回、年間で四十八回派遣する。一回で三千五百円の報酬を区が払う。深刻なケースは区の子ども家庭支援センターが関係機関と組んで取り扱う。 民生・児童委員や保育
昨年末の発足後、脱原発路線の見直し発言が相次ぐ安倍晋三政権。内閣や官邸の顔ぶれを見ても原発維持派がずらりと並んだ。最大の焦点は、日本の原子力政策の中核を占めた核燃料サイクル事業の位置づけ。福島の原発事故で原子力施設の安全性が疑問視される中、韓国など東アジアの原発から出る使用済み核燃料を青森県六ケ所村の再処理施設で再処理することで延命を図る構想が浮上している。 (北島忠輔、谷悠己) 【こちらは記事の前文です】 記事全文をご覧になりたい方は、東京新聞朝刊をご利用ください。 東京新聞は、関東エリアの駅売店、コンビニエンスストアなどでお求めいただけます。 購読・バックナンバーをご希望の方は「新聞購読のご案内」をご覧ください。 掲載日やキーワードから記事を探す「記事検索サービス」もご利用ください。
野田内閣が「二〇三〇年代に原発稼働ゼロ」を目指す戦略の閣議決定の是非を判断する直前、米政府側が閣議決定を見送るよう要求していたことが二十一日、政府内部への取材で分かった。米高官は日本側による事前説明の場で「法律にしたり、閣議決定して政策をしばり、見直せなくなることを懸念する」と述べ、将来の内閣を含めて日本が原発稼働ゼロの戦略を変える余地を残すよう求めていた。 政府は「革新的エネルギー・環境(エネ環)戦略」の決定が大詰めを迎えた九月初め以降、在米日本大使館や、訪米した大串博志内閣府政務官、長島昭久首相補佐官らが戦略の内容説明を米側に繰り返した。 さらに米側は「二〇三〇年代」という期限を設けた目標も問題視した。米民主党政権に強い影響力があるシンクタンク、新米国安全保障センター(CNAS)のクローニン上級顧問は十三日、「具体的な行程もなく、目標時期を示す政策は危うい」と指摘した。これに対して、長
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