三月に入り各クラスの順位戦が次々と終って、いよいよ第三回電王戦の開幕である。将棋界に歳時記というものがもしあれば、電王戦は名人戦と並んで春の季語としてすっかり定着した感がある。 朝、眠い頭と体で会場の有明コロシアムに入ると、いきなり菅井が明るい顔で出迎えてくれた。一番先に対局者に会うというのは妙な気分である。肩を叩いて「頑張れよ」という。普段の対局では相手も同業者なのでいくら親しくてもこういうことはいわないのが業界でのマナーなので、これは電王戦ならではのことだ。菅井は「はい、全力を尽します」と答えた。「練習は随分したの」と訊くと「はい、95勝97敗です」と即答されのけぞった。200局ちかく指したというのはすごい局数である。 有明コロシアムはボクシングの観戦で何度か来ているが、本日のように中央にポツンと舞台があり、まったく観客がいないというのはちょっと異様で、シュールな感じであった。菅井は絶
![第3回 将棋電王戦 第1局 観戦記(筆者・先崎学)](https://cdn-ak-scissors.b.st-hatena.com/image/square/61f79491d8d4f32bde3ebfe7b1ef2483811e40ed/height=288;version=1;width=512/https%3A%2F%2Fnews.cdn.nimg.jp%2Farticles%2Fimages%2F995987%2F863133l.jpg)