音のない世界を恐れ、外出を控えがちになる聴覚障害者にとって、聴導犬は暮らしに希望を与える存在。利用者は「幸せと充実した日々を運んでくれた」と話す。だが全国でわずか67頭と、盲導犬の1割にも満たない。理解不足から入店を断られるケースもあるという。一般社団法人「日本聴導犬推進協会」(埼玉県ふじみ野市、河野滋代表)は、聴導犬の育成と広報活動を行う県内唯一の団体。職員は「聴導犬が当たり前に受け入れられる社会になってほしい」と願っている。 住宅街の民家の一室で、聴導犬の訓練が行われていた。ピピピピピ…。床上に置かれたタイマーが鳴ると、3歳の雑種犬「さんた」は走って音の元へ行き、音源を確認した。すぐに訓練士に駆け寄って鼻で体にタッチ。訓練士が手話で「何?」と聞くと、タイマーの元へと誘導した。電話の着信音のほか、サイレンや車のクラクションなどの危険音―。あらゆる音に対応できるよう、2~3年の訓練を経て聴