『稚児之草紙』 第一段 仁和寺の開設の頃であろうか。世間に評判の良い貴い僧がおいでになった。御老年に至られた通りに、三密の行法の徳に感化されて、人格も呪術の効力も、抜群でいらしたけれども、更にこの道も捨てられずにいられた。お側づかえの美少年の数も多かった中にも、特に親密に添い臥しに上る童が一人あった。しかし貴い人も賤しい人も、区別のないのが性的能力である。何分盛りを過ぎたお体なので、性行為も思う儘にはお出来にならない。御心は逸るのだが、築地塀に重藤の矢を射るようなもので、ただ山の形(尻)をこするばかりの矢(男根)の有様で、それを姦通するなど思いも寄らない。でこの童は残念な事だと思って、毎夜入念に準備して、先ず中太という童の養育係りの子の男を呼び寄せ、彼の男根を匍はせて和らげ、つぎに大きな張り形を持たせて突かせ、それに丁子油などを塗って尻の中に入れさせた。中太はこれまでして、真心で奉公したの