「お客さん、どちらのご出身ですか?」。長野県に赴任して約1年2カ月。行きつけの飲み屋も何軒かできた。のれんを何度かくぐるうちに店のマスターや女将と顔なじみになってくると、冒頭のように出身地を尋ねられるのはどこでも同じように見られる光景だろう。 だが、長野県の場合はちょっと事情が違う。もちろん「どちらのご出身ですか?」と聞かれるのは同じだが、長野県では、この出身という言葉は「どちらの高校の卒業生ですか?」ということを指すことが多い。 長野県に着任して日が浅いうちは、その辺の機敏が分からず、「生まれですか? 東北の山形ですよ」と精いっぱいの笑顔を浮かべて答えていたのだが、マスターや女将は「ふーん」とか「へぇー」とかと応じるだけで、会話がそのまま途切れてしまうことが多かった。 同業他社の支局長と会った機会に、このことを話すと「笠原さん、長野で『どこの出身ですか』と聞かれたら、それは『どちらの高校