『Jäger, Hirten, Kritiker(狩人、羊飼い、評論家)』の著者リヒャルト・ダーヴィット・プレヒトは、テレビにも登場する人気の哲学者。奇妙なタイトルの意味は後に言及するが、本書のテーマはビッグデータ、ロボット、AIなど、社会のデジタル化である。 著者が特に気にかけるのは、アマゾンをはじめとする米インターネット企業の動向だ。彼らは、個人の購買履歴と膨大な顧客データを元に、「あなたが欲するであろう商品」を勝手に紹介してくれる。人々は自ら商品を選ばず、パソコンやタブレットに示される「おすすめ商品」に、「これ欲しい!」と反応するだけになってしまう。これでは、ベルが鳴ると涎を出すように条件づけられた「パブロフの犬」とどこが違うのか。 EUが準備中のデジタル基本権憲章の原案では、購買履歴などの個人情報は自決権の対象であり、企業が個々のデータとその用途を示すことなく、個人に譲渡を認めさせ