兄さんが結婚するかもしれない。 今の彼女さんとの関係が、思ったより進展していて。 「適齢期」とかよく分かんないけど、兄さんも30歳になったんだし、『そういうコト』を真剣に考える時期でもあるんだよね。 こんなとき、9歳も年下の妹だというコトが、つらい。 年齢だけでなく、『距離』が離れていく。 存在が遠ざかる。 つらいよ。 × × × 朝ご飯を食べ終えたあとで、母さんに、 「あのさ。兄さんの……」 と言いかけて、口ごもる。 ハッキリ言えない自己嫌悪。 わたしのココロの状態を知ってか知らずか、母さんは、 「さやか。お湯が沸いてるから、コーヒー飲めるけど、どうする?」 少し考えてから、 「飲む。」 と答える。 アツアツで真っ黒いコーヒーが手元に置かれる。 親友の某・羽田愛は、いつもこういうアツアツ真っ黒コーヒーを飲んでいる。 愛ほど耐性が無いわたしは、シュガーポットに手を伸ばし、苦さを軽減させよう