ブックマーク / bakhtin19880823.hatenadiary.jp (643)

  • 【愛の◯◯】父の日はカラダにチカラが入る - 音楽と本、それからそれから……。

    両親の住む一軒家に来ている。 今日はなんといっても父の日! であるがゆえに、 「おとうさん、あのね」 と、ダイニングテーブルの席についているおとうさんにゆっくりと近付いていくわたし。 意図を察して立ち上がってくれるおとうさん。 わたしは緊張してしまい、紙袋を差し出そうとする両手が震えを起こしてしまう。 見つめ合うコトすら上手にできない。 大学4年生にもなって未だファーザー・コンプレックス。 そんな不甲斐無いわたしにおとうさんが、 「愛。おまえは変わんないな」 「え……。どこが?」 「いざとなると自分を出し切れないところ」 「『いざとなると』って……」 「いざ父の日のプレゼントを渡す段になって、緊張しまくってるじゃないか」 6月だというのに背中がヒヤリとするわたし。 「もっと自然で良いんだよ。おれのコトをリスペクトし過ぎてるんじゃないか? だから、全身に余計なチカラが入る」 わたしは、うつ

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    s-johnny
    s-johnny 2024/06/16
  • 【愛の◯◯】女心と6月の空 - 音楽と本、それからそれから……。

    「茶々乃(ささの)さん、今日は短縮版ですよ」 「そうなんだね、リリカちゃん」 「手短に自己紹介しておきませんか?」 「だねー。わたしは紅月茶々乃(こうづき ささの)。大学4年生で、『虹北学園(こうほくがくえん)』っていう児童文学サークルの幹部をしてて、なおかつ、音楽鑑賞サークル『MINT JAMS(ミント・ジャムス)』にも頻繁に出入りしてる。今日も、『MINT JAMS』のサークル部屋にお邪魔してるところ」 「わたしは朝日(あさひ)リリカです。『MINT JAMS』の会員で、茶々乃さんの1個下」 「リリカちゃんの自己紹介はアッサリとした自己紹介だね」 「ムラサキさんだったら自己紹介がもっとクドくなるんですけどね」 「わたしの同期で『MINT JAMS』の会員でこのサークル部屋にもほとんど常駐してるムラサキくんだったら延々と自己PRし続けそうだよね」 「さすが茶々乃さん。良く分かっていらっし

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    s-johnny
    s-johnny 2024/06/15
  • 【愛の◯◯】新田くんのスケッチブック - 音楽と本、それからそれから……。

    自転車に乗って某・公園まで向かった。 到着して広い敷地内をぶらぶら。 6月では貴重な晴れた日で、湿気のベタベタした感じもあまり無い。 ステキな日ね。 わたしは池のほとりまで来た。 そしたら、なんと!! 見知った男の子が木のベンチに座ってスケッチブックを持っていて……!! × × × 新田俊昭(にった としあき)くんだった。 わたくし羽田愛が幹事長を務めている『漫研ときどきソフトボールの会』の同級生会員。 漫画家志望の男の子。 公園の風景をスケッチして腕を磨いてるのね。偉いわ。 こちらから挨拶したら、彼はとっても驚いていた。 ベンチの左隣が空いていたから腰掛けたら、驚きに加えて緊張がプラスされたらしく、スケッチする手を止めて背気味になってしまった。 「続けたら良いのに、スケッチ」 柔らかく言うと、 「しゃ、しゃ、喋りながらだと、上手くスケッチできないから」 「そんなコトで漫画家としてやって

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    s-johnny
    s-johnny 2024/06/14
  • 【愛の◯◯】図書館で、ドイツ文学コンビに出会って…… - 音楽と本、それからそれから……。

    午前中ずっと、お邸(やしき)のハンモックで単行の推理小説を読んでいる。 向こう側から流(ながる)さんがやって来た。 わたしは、流さんの顔を見て、 「話し掛けるのは少し待ってくださいね。今、推理小説の犯人が動機を語ってるので」 「わかった」 彼は、小さなテーブルの前の椅子に腰掛け、わたしが読み終えるのを待ってくれる。素敵。 ぱたん、とを閉じたわたしは、 「読み終わったので喋っても良いですよ」 「愛ちゃんが――」 流さんは、 「推理作家のを読むなんて、珍しいね。しかも、その作家はかなりの売れっ子じゃないか」 「ながるさぁーん」 「え、えっ?? その微笑みは、なに……」 「わたしが海外のガチガチの現代文学ばっかり読んでるとか思ってません? ハッキリ言います。誤解です」 うぅ……とうろたえる彼。 少し可哀想なんだけども、 「推理小説SFもわたしの守備範囲ですから」 と言ったら、彼は苦し紛れ

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    s-johnny
    s-johnny 2024/06/13
  • 【愛の◯◯】オムライスと古着 - 音楽と本、それからそれから……。

    親友の久里香(くりか)とカフェで昼ごはんだ。 わたしも久里香もオムライスを注文した。 デミグラスソースとホワイトソースが一緒にかけられたオムライスが運ばれてきた。 卵はトロトロ。 べてみる。 ソースが2つもかかっているのに全然クドくない。 中身は、ケチャップで薄く味がつけられたご飯。ご飯の味付けが絶妙で、デミグラスソースやホワイトソースと響き合っている。お米の炊き加減も申し分ない。 あっという間にべ切ってしまった。 「よっぽどお腹すいてたんだね」 久里香に言われてしまった。 「ごめん、早いで」 謝ると、 「いいんだよ、謝らなくたって」 と笑顔で言いながら、久里香はスプーンを口に運んでいく。 少し遅れてオムライスをべ切った久里香は、 「もう一度べたくなる味だったな。このお店入って正解だった」 「そうだね」 わたしは頷いて同意する。 「さて」 と言って久里香は、 「久しぶりに、ふたり

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    s-johnny
    s-johnny 2024/06/12
  • 【愛の◯◯】彼女が妬(や)くのは思った通りで - 音楽と本、それからそれから……。

    壁時計が午後3時を示していた。 リビングのソファに座ってお菓子をべていたら、利比古くんがフラリと姿を現してきた。 「今日大学無いの?」 訊くと、 「無いんです」 という答えが。 「ヒマなんだね」と私。 「梢さんこそ」と苦笑いの利比古くん。 「座りなよ」と私。 「ハイ」 私の真正面のソファに腰を下ろす彼。 『相変わらずハンサムだねえ……』と声に出さずココロの中で呟いてから、 「お菓子あるよ。べなよ」 とお皿を差し出す私。 「ありがとうございます」 ここで私は、 「『ゆめタウン』にも、こんなお菓子売ってるのかなあ」 「え、『ゆめタウン』、ですか?」 「そ。広島県が拠地のショッピングモール的な何か」 「『的な何か』って付け足す必要あるんでしょうか」 苦笑してそう言う彼に、 「確かに」 と応え、 「西日イオンモールみたいな感じだからさ。『西日研究会』の私にとっては重要な研究対象なんだよ

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    s-johnny 2024/06/11
  • 【愛の◯◯】21歳目前のわたしを…… - 音楽と本、それからそれから……。

    流(ながる)さんの彼女さんのカレンさんは名前の通り可憐な美女だ。 わたしたちの邸(いえ)にやって来た彼女。リビング。ソファ。わたしの真向かいで流さんに寄り添って座っている。 わたしから見て流さんの右隣に座っているカレンさんはニコニコと、 「流くん。楽しみでしょ」 「え。何が」 キョトンとする流さんに、 「にぶーい。鈍過ぎ。新人賞のコトだよっ」 ついに流さんが小説の新人賞に投稿したのだった。 結果はまだ分からない。 「受賞したらデビューできるんでしょ!? 楽しみだねぇ」 「いや、そう簡単には。何回か選考もあるし」 控え目な流さん。 『受賞を目指して投稿したんだから、もっと前向きでも良いんじゃないですか?』 わたしがココロの中でそういう風に思っていると、 「そんなに弱気でどーすんのよ〜〜〜!!!」 と、満面の笑顔でカレンさんが流さんの背中をバンバンと叩いた。 押されまくりの流さん。 「か、カレ

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    s-johnny 2024/05/26
  • 【愛の◯◯】年下ならば◯◯。年上ならば……。 - 音楽と本、それからそれから……。

    「加賀くん」 「なんだ? あすかさん」 「状況説明させてよ」 「どーぞ」 「後輩の加賀くんとのビデオ通話。スポーツ新聞部出身者同士のいわば『OGOB会』」 「なーんか大げさだな、『OGOB会』とか」 「そんなコト無いよっ!!!」 「叫ばなくても」 「……ねえ。加賀くん?」 「なんだよ」 「わたしさ、いま、ベッドに腹ばいになって、スマホ見ながら喋ってるんだけど」 「それがどーした」 「だらしないって思う? そ・れ・と・も……」 「だらしないのヒトコトだな」 「ガクッ!!!」 「や、なにがやりたいんだあんた」 「……わたしが、やりたいのはね」 「おう」 「『スポーツ新聞部に1年生の男の子が2人入ったんだよ』っていう、キミへの情報提供」 「男子2人? 初耳だな」 「言うの遅れちゃってた」 「その男子2人は戦力になりそうなんか」 「入学したての頃の加賀くんよりは200倍戦力になるみたいだよ」 「…

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    s-johnny 2024/05/25
  • 【愛の◯◯】ノジマくんとタダカワくん - 音楽と本、それからそれから……。

    1年生部員の野島始(ノジマ ハジメ)くんがわたしに近付いてきた。 「これ、できたので見てください」 差し出されたのはプロ野球の打者成績と投手成績。 打者は打率順、投手は防御率順に成績がリストアップされているのは分かる……んだけど、 「『見てください』と言われても、細か過ぎて見方がよく分かんないな、正直」 「細か過ぎる!?」 何故か派手な声を上げるノジマくん。 何故に。 「野球記録は細かいから良いんじゃないですか!! 野球記録以上に魅力的な『数字』はこの世にありませんよ!?」 「ええぇ……」とわたしは思わずうろたえの声を漏らす。 興奮気味に眉間に指を持っていき、メガネの位置を調節するノジマくん。 「貝沢(かいざわ)センパイ」 「な、なあに」 「この際ですから逐一レクチャーしてあげます」 「逐一って……野球記録のコト?」 「まさに」 それからノジマくんに野球記録について長々と解説された。 30

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    s-johnny
    s-johnny 2024/05/24
  • 【愛の◯◯】乱調が極まり密着も極まる - 音楽と本、それからそれから……。

    今日もサークル部屋の『幹事長席』に座っている。 わたしの近くの席にいる後輩の和田成清(わだ なりきよ)くんがアニメソングについて熱く語っていて、わたしはそれを聴いている。 テレビアニメの主題歌がお題だった。 かつてはアニメの内容と関係の無い楽曲が目立つ時期もあった。特にフジテレビのアニメに顕著だったと成清くんは指摘する。 「おれたちが産まれる前の話ではあるんですが……」 「成清くんは、そういった『現象』についてどう思ってるの? アニメと関係の無い曲がテーマソングになるのは、やっぱりおかしいと思う?」 彼はモゴモゴと、 「『是非』については……コメントは……しないでおきます」 どうしてかなーっ。 「どうしてモゴモゴするのよ。ハッキリ意見を言っても良いじゃないの。どうせわたししか聴いてないんだし」 わたしと成清くん以外に誰も居ないサークル部屋だった。 「たとえタイアップであっても、作り手にタイ

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    s-johnny
    s-johnny 2024/05/23
  • 【愛の◯◯】コインの表は厳しさ。それならば、裏は……。 - 音楽と本、それからそれから……。

    サークル部屋の奥のいわゆる『幹事長席』に座っている。右斜め前には侑(ゆう)、左斜め前には新田くん。侑と新田くんが向かい合ういつもの構図だ。 わたしは手塚治虫の漫画の文庫を読んでいた。 新田くんが、 「羽田さんは流石にお目が高い。手塚漫画でもその作品を読むなんて」 「え、そう?」 サークル部屋の棚から適当に抜き出したなんて言えなくなっちゃった。 新田くんは何故か腕を組み始め、 「手塚治虫といえば『漫画の神様』という称号で知られてるけど」 「……うん」 「でもね」 「……でも?」 「『漫画の神様』は2人いる!! って言う人もいるんだよ」 「もう1人の『神様』は、誰なの??」 彼は何故か不敵な笑みで、 「水木しげるだよ」 水木しげる。 妖怪。 ゲゲゲの鬼太郎。 ゲゲゲの女房の旦那さん。 水木しげるが、手塚治虫と、並び立つんだ。 水木しげるが『神様』となる理由を訊きたくもあったが、 「水木センセ

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    s-johnny
    s-johnny 2024/05/22
  • 【愛の◯◯】ほのかちゃんの男子2人への不満を受け止めていたら……。 - 音楽と本、それからそれから……。

    川又ほのかちゃんと2人だけで喫茶店に来ている。 ブレンドコーヒーをグイッと飲んでからほのかちゃんは、 「あすかちゃん。愚痴(グチ)、こぼしても良い?」 「愚痴?」 「そう。約2名の男の子に対する不満」 ほほぉ。 「約2名かー。1人は利比古くんだよね。もう1人は誰?」 「丸田吉蔵(まるた よしぞう)くん」 「あー、ほのかちゃんの実家のカフェによく出入りしてるっていう」 なんでもわたしの兄貴を追いかけるようにしてボクシングジムに入って鍛えているらしい。ほのかちゃんから丸田くんと兄貴との接点を聞かされた時は驚いた。 だが、それはそうと、 「ほのかちゃんは丸田くんの俳句好(ず)きがいけ好(す)かない感じなんでしょ」 短歌派のほのかちゃん、俳句派の丸田くんという対比。短歌と俳句はうまく折り合えないらしい。 「そうそうそう。そーなんだよ」 ほのかちゃんがやや前のめりになる。 「この前ウチの店に来た時も

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    s-johnny
    s-johnny 2024/05/21
  • 【愛の◯◯】就職とミニ四駆 - 音楽と本、それからそれから……。

    祖父の邸宅(いえ)を出て、タクシーに乗り、アルバイト先の商店街へと向かって行く。 タクシーの車内でお祖父(じい)さんとのやり取りを振り返る。 内定が出て就職先を決めた報告をしたら、 『おまえに合った仕事で良かったな。しっかりやるんだぞ』 と言われた。 存在感が大きくて畏(おそ)れ多さみたいなモノも抱いてしまうお祖父さん。でも、今日は終始上機嫌で、 『アカ子よ。お祝いだ。私と呑まんか?』 と訊いてきた。 もちろんお酒を勧めてきたのである。 『とびっきりの酒を用意してやったのだ』 恐らく高級銘柄の日酒なのだろうという予測がついた。 だけれど、 『いいえ。お気持ちは嬉しいですが、わたしはこれからアルバイトがありますので……』 と辞退した。 『良いではないか? 景気付けの1杯ぐらいなら』 『よ、良くは無いと思うんですけれど』 『真面目だな。おまえの両親とは大違いだ』 どうリアクションして良いのや

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    s-johnny
    s-johnny 2024/05/19
  • 【愛の◯◯】姉弟の、アナウンサー適性!? - 音楽と本、それからそれから……。

    「利比古」 「なあに? お姉ちゃん」 「あんた言ってたわよね。『KHKが復活したみたいだ』って」 「あー、そうそう。そうみたいなんだよ」 「KHK。略さないと『桐原放送協会』。あんたが桐原高校に通ってた時代に入ってたクラブ活動」 「説明ありがとう」 「どこからKHK復活の情報を入手したの?」 「どこからともなく」 「ちょ、ちょっとっ。『どこからともなく』じゃないでしょっ」 「そだね」 「ハンサム顔に似合わない不真面目さはイヤよ……?」 「わかったわかった、お姉ちゃん」 「それで、KHK復活の情報源は、結局……」 「教えてあげるから、もっとぼくに近付いてきてよ」 「えっ!?」 × × × 「なるほど。そういうルートで情報が来たのね」 「うん」 「わたしの耳元でささやいて答える必要も無かったと思うけど」 「ま、細かいコトは良いでしょ」 「なーんか、ちゃらんぽらんね」 「そう思う?」 「あんたも

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    s-johnny
    s-johnny 2024/05/18
  • 【愛の◯◯】校内放送の覚悟のススメ - 音楽と本、それからそれから……。

    「はーーーーーい!!! 中川紅葉(なかがわ もみじ)だよん。 今日は金曜日、『ランチタイムメガミックス』はわたしが担当。 昨日は別の子が担当で、わたしが喋るのは水曜日ぶり。 昨日は明日『ランチタイムメガミックス』で喋るのが待ち遠しかった。ほんとうに待ち遠しかった。 『ランチタイムメガミックス』の主導権はわたしが握りたいんだ。 ところでっ。 この番組名『ランチタイムメガミックス』なんだけど、カタカナ12文字で、長いよね。 略称がどう考えても必要なんだよ。 まあ、『ランメガ』とか? あるいは、6文字で『ランチメガミ』とか? 『ランチメガミ』かぁ。 ランチ『メガミ』と略すからには、わたしたちパーソナリティは全員『女神(メガミ)』ってワケだよねえ。 週刊少年マガジンの漫画で『女神のカフェテラス』っていうのもあるけど……。 ねぇ、トヨサキくん。 わたしの斜め向かい側の席でボーっとしてる、来はアシス

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    s-johnny
    s-johnny 2024/05/17
  • 【愛の◯◯】再会して6年目の彼女はオレンジ色のワンピースで…… - 音楽と本、それからそれから……。

    むつみちゃんが着ているワンピースは鮮やかなオレンジ色だ。 メロンソーダが入ったグラスのストローを口に含もうとするむつみちゃんに眼を凝らすと、 「どーしたの? キョウくん」 あ。マズい。 慌てて、 「ごめん、なんか変な眼で……むつみちゃんを見ちゃってた」 彼女は軽く笑い、 「今のキョウくん可愛い」 と言い、 「わたしが可愛いから、可愛く見惚(みと)れちゃってたのね」 と非常に『らしい』コトバを言う。 それから、 「このワンピースの色、どう思う?」 と、自分で自分のワンピースをつまんで訊いてくる。 「良いと思うよ。だんだん暑くなってくる季節にピッタリだと思う」 「ありがと」 そしてむつみちゃんは、 「キョウくんの言う通りだわ。次第に気温が高くなってくる今の季節にはオレンジ色がピッタリ合う」 と言って、それから、 「7枠カラー」 と、付け加える。 おれはすぐに彼女が「7枠カラー」と言った意味を把

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    s-johnny
    s-johnny 2024/05/12
  • 【愛の◯◯】呼称の問題 - 音楽と本、それからそれから……。

    「おねーさーん。わたしここ最近『出番』が少なくてつまんないです」 「ブログにもっと登場したいってコト? あすかちゃん」 「まさに」 「まあ気長に待ちなさいよ。もし5月が終わるまでに1回も出番が無かったりしたら、わたしがあすかちゃんの代わりにクレーム入れてあげるけど」 「万が一そうなったら是非お願いします」 「たぶんそんな事態にはならないと思うけどね」 「ところでおねーさん」 「? 他に話題あるの」 「あります。管理人さんへの不満だけ言って終わりでは無く」 「……あっ。もしかしたら」 「勘付きましたか?」 「うん。あなたと高校で同級生だった徳山さんと濱野くんがデートしたのよね? それを具(つぶさ)に報告したかったんじゃないの」 「わたしがデート現場に立ち会ったワケじゃ無いから『報告』ってのも変なんですけどね」 「教えてほしいわ。どんな場所でデートしてどんな場所で事したのか」 「名画座に行っ

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    s-johnny
    s-johnny 2024/05/11
  • 【愛の◯◯】おこづかいが、お寿司になる - 音楽と本、それからそれから……。

    徳山さんは新緑の季節らしい爽やかな装いだ。 「おはよう、濱野(はまの)くん」 挨拶されたので、 「おはよう」 と返す。 それからおれは、 「会うのが1週間延びてすまなかった」 と謝罪する。 「ホントよね」 徳山さんは、 「あなたドタキャンするんだもの。いきなり予定が白紙になったから困っちゃった」 と苦笑しながら言う。 「申し訳無かった。先週スケジュールを白紙にさせてしまった分を今日は埋め合わせる。きみのために頑張る」 「頑張るってなあに」 笑顔でそう言いながらおれに近付き、 「濱野くん絶対全身にチカラ入り過ぎてるでしょ」 と言いながら肩を寄せてくる。 緊張してカチカチになりそうな左腕に彼女が右腕を絡めてくる。 「大胆……じゃない? 徳山さん……」 「何を言うの」 混乱の最中(さなか)のおれは、 「『公共の福祉』というか何というか……」 と自分でもワケの分からないコトを口走ってしまう。 「『

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    s-johnny
    s-johnny 2024/05/10
  • 【愛の◯◯】『キライ』という意識の残酷さ - 音楽と本、それからそれから……。

    学生会館に入り、エレベーターに乗り込み、5階のボタンを押す。 サークル室のドアまで行き、鍵がかかっているかいないか確かめる。ロックは解除されていた。誰かが中に居る。 ドアノブに手をかけ、ドアを開ける。中には新田くんだけが居た。わたしから見て右サイドのいつもの席でいつもの如く漫画を読んでいる。 当に当に呑気なモノだと思う。新田くんは自分が置かれている状況を理解しているのかしら。大学4年の5月よ!? 『無い内定』の学生が頭を抱えているような時期よ!? 新田くんの逆サイドの長机に行き、椅子に腰掛ける。取り出したスケジュール帳を新田くんを睨みつける代わりに睨みつける。 「おはよう、大井町さん」 新田くんは呑気に言うが、 「何を言うの新田くん。もう午後よ。もしかしたらわたしが第二文学部の学生だからわざと『おはよう』って言ったワケ」 「そうともいう」 『そうともいう』じゃないわよっ。 『おはよう』

    【愛の◯◯】『キライ』という意識の残酷さ - 音楽と本、それからそれから……。
    s-johnny
    s-johnny 2024/05/09
  • 【愛の◯◯】沁みるから、打ち明ける - 音楽と本、それからそれから……。

    戸部アツマくんの実家のお邸(やしき)に来ている。 今日と明日が仕事休みになったので名古屋から帰京した。戸部くんに電話をかけて『あなたの実家のお邸に泊まっても良い?』と訊いた。 戸部くんは快諾。しかし、喫茶店でのお仕事がギッチリと入っているので応対はできないと伝えられた。 肝心な時にスケジュールが埋まってるのね。社会人としてそーゆーとこをどーにかできないモノなのかしら。 戸部くんは居てくれない。だけど、嬉しいコトに一緒にお泊まりしてくれる女の子が居る。 藤村杏(ふじむら あん)さんだ。戸部くんと高校時代同級生だった娘(こ)。偶然にもわたしと彼女の仕事休みが重なり、ふたりでお邸(やしき)に宿泊できるコトになった。 まずは銭湯みたいに大きいお風呂で疲れを洗い流した。 それからゆったりとした服装に着替えた。 それからそれから、リビングの長テーブルを挟んでカーペットに腰を下ろし、互いを労(ねぎら)う

    【愛の◯◯】沁みるから、打ち明ける - 音楽と本、それからそれから……。
    s-johnny
    s-johnny 2024/05/08