ブックマーク / bakhtin19880823.hatenadiary.jp (657)

  • 【愛の◯◯】壁側と利き腕 - 音楽と本、それからそれから……。

    さやかさんが難しそうなを読んでいる。いったいどんななんだろう。彼女の座るソファから少し距離がある。だから、背表紙が見えにくい。ハードカバーの学術書であるのは間違い無い。流石は『最高学府』の4年生。教養学部所属らしく、教養バリバリな感じだ。彼女のソファの周囲に彼女の知性が横溢(おういつ)しているみたい。 そして、彼女は間違い無く髪を切った。高校2年生ぐらいの頃の短さに戻っている。近頃では髪が長くなっていて、ひょっとすると、わたしよりも長く伸びているのかもしれない程だった。わたしの髪の長さは長年両肩に触れる程度だ。最近のさやかさんの髪は両肩よりも下まで伸びていたんでは無かろうか。だけど、この邸(いえ)を今日訪ねてきたさやかさんの髪は、ショートカットの領域に近付いていた。 わたしは自分のソファから立ち上がり、ぺたぺたと彼女のソファとの距離を詰めた。左斜め前に彼女の居るポジションのソファに腰を

    【愛の◯◯】壁側と利き腕 - 音楽と本、それからそれから……。
    s-johnny
    s-johnny 2024/07/20
  • 【愛の◯◯】「途切れ途切れ」の小泉さん - 音楽と本、それからそれから……。

    「小泉さーん」 電話の向こうの小泉さんに呼びかけてみる。 しかし、返事が無い。 唐突な沈黙。 謎の沈黙。 なにゆえ? 「小泉さーーん」 もう1回呼びかけ。 すると、ようやく、 「あ、ああっ、あああっ、利比古くんゴメンねゴメンね、何もかも、うわの空だった……!!」 どうしてだろうか。 小泉さん、凄く慌てた声だ。 彼女にいったい何があったというのか。 一瞬、考えようとする。 でも、『まあいいか』と思って、 「とりあえず落ち着いてください」 と小泉さんにお願いする。 「……うん。精一杯落ち着く」 小泉さんのフニャけた声。 精一杯落ち着くって何だろう。 まあいいか。 この通話で大事なのは、 「日テレビ系列の夕方のニュース番組の歴史について話してくれるんでしたよね?」 「そうだったね利比古くん。わたしときみとで放送文化的トークするための通話だったよね。なのに、わたし、何をやってるんだろう。心ここに

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    s-johnny
    s-johnny 2024/07/20
  • 【愛の◯◯】オニギリと『情報公開』 - 音楽と本、それからそれから……。

    放課後。 【第2放送室】に、タカムラかなえが、おれよりも少し遅れて入ってきた。 「トヨサキくん早いね。いいコトいいコト」 そう言ってから、タカムラはミキサーにバッグを置き、バッグを開いて何やらガサゴソとやり出した。 何を出すつもりなんだ。 「キミに良いモノをあげるよ」 そのコトバと共にタカムラが取り出したのは、小さな袋。 「良いモノって、その中にいったい何が入ってるんだ?」 「オニギリだよ」 ほぉ。 オニギリ、ねぇ。 「わたしのクラス、さっきまで調理実習だったの」 「なるほど。で、オニギリ作ったけど、余りました……と」 「そーだよ」 タカムラが、ラップに包まれた2個のオニギリを袋から取り出す。 「べたかったらこっちに来るんだよ」 言われたので、奥の方のパイプ椅子から立ち上がり、タカムラの方へと歩み寄る。 タカムラも立ち上がり、2個のオニギリを両手に乗っけておれと向かい合う。 「トヨサキく

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    s-johnny
    s-johnny 2024/07/17
  • 【愛の◯◯】トヨサキくんをいかにして鍛えるか - 音楽と本、それからそれから……。

    「トヨサキくん」 「なに」 「1学期もうすぐ終わるね」 「おう」 「終わるんだけどさ」 「ん?」 「キミ、あんまり成長してないよね?」 「せ……成長、とは」 放課後なのである。 KHK(桐原放送協会)の活動をやろうとしているのである。 【第2放送室】の奥の方でトヨサキくんがパイプ椅子に座っている。 入り口ドア付近のパイプ椅子からわたしは立ち上がり、トヨサキくんに近付いていき、彼の眼の前で立ち止まり、腰の両側に手を当て、彼の顔面を見下ろす。 「なんなんだ。どうしたんだタカムラ」 「いつまでもこのままで良いワケが無い」 「はあ?」 「夏休みはキミを遊ばせないよ」 「ど、どーゆーいみだ」 「『ランチタイムメガミックス』だけどさ」 わたしはひと呼吸置いてから、 「2学期になったら、パーソナリティをキミが単独で担当できるようにしたい。つまり、『1人で喋られるように、キミを磨き上げたい』ってコト」 「

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    s-johnny
    s-johnny 2024/07/16
  • 【愛の◯◯】愛母と1対1で◯◯ - 音楽と本、それからそれから……。

    海の日。 午後2時過ぎ。 愛と利比古のご両親の家に来ている。 現在、愛と利比古のお母さんとふたりきりだ。 『海の日は仕事休みになるんですってね? わたしんち来ない? 夫は用事があって横浜に行ってるから、わたしと1対1の『サシ』状態になるけど、是非来て欲しいわ。アツマくんが『サシ』状態で緊張しちゃったりしても、わたしが肩の力を抜かせてあげるから』 愛と利比古のお母さんたる心(シン)さんがそう電話してきたのである。 電話で押し切られた格好になり、訪問せざるを得なくなったワケだ。 さて、ダイニングテーブルで、偉大なるお母様の心(シン)さんと向かい合っている状態。 ちなみに、お母様の下の名前は「心」と書いて「こころ」と読むのだが、『「心(シン)さん」って呼んでよ〜』と人からお願いされていたので、「シンさん」と呼んでいるのである。 ややこしい説明になっちまったな……と思いながらコーヒーカップを口に

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    s-johnny
    s-johnny 2024/07/15
  • 【愛の◯◯】比較的レアケースな組み合わせだけど白熱 - 音楽と本、それからそれから……。

    日曜日。 午前10時台。 戸部邸。 リビング。 モスグリーンカラーのソファにアカ子さんが座っている。 真向かいのソファのぼくに、 「利比古くんのお誕生日のちょうど1か月前よね?」 「そうですね。8月14日が誕生日ですから」 「わたし待ち遠しいわ」 「そうなんですか?」 「お誕生日を迎えたら、利比古くんはハタチになるでしょう?」 左腕で軽く頬杖をつきながら、満面の笑み。 まさか。 もしや。 ぼくが「ハタチになる」のを強調するというコトは。 「呑(の)めるじゃないの。とうとう」 ほらっ。 やはり。 アカ子さんが待望しているのは、アルコールの解禁。 ぼくに飲酒が許された瞬間に、彼女はおそらく……。 「あなたのお姉さんとは違って、炭酸が入ってる飲み物も大丈夫なのよね?」 「……はい。コーラを口に含んだだけで理性を失うとか、そういうのは無いです」 「だったら、あなたがハタチになったら、ビールでカンパ

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    s-johnny
    s-johnny 2024/07/14
  • 【愛の◯◯】獰猛さが、好き。 - 音楽と本、それからそれから……。

    「ダイチ!!!」 「なんだその大声は、ソラ」 「眠いの!? もしかして」 「なぜそう思う」 「だって声がヒョロけてるし」 「ヒョロけてるってなんだ、ヒョロけてるって」 「土曜の朝だし、起きたばっかりなんじゃないの」 「普通に寝て普通に起きたが?」 「信用できない!!」 「オイこら」 「ベッドの上でウトウトしてたらわたしの電話がかかってきたとかなんじゃないの!?」 「それはない」 「……あっそ」 「ソラ」 「なに」 「おはよう」 「お、おはようっ」 × × × 「状況説明。わたしがダイチにモーニングコールしてるとこ」 「その説明は当に必要だったのか?」 「うるさいうるさい」 「『うるさい』は1回にしておけ」 「……自己紹介!! 自己紹介タイム!!」 「誰に対して」 「ブログ読者の皆様に対して」 「君とボクが大学生になったからか?」 「そーだよ。あらためて、ってコトだよ」 「ボクが先に自己紹

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    s-johnny
    s-johnny 2024/07/13
  • 【愛の◯◯】年上お姉さんの蜜柑さんが笑顔で◯◯ - 音楽と本、それからそれから……。

    夕方。 出身大学の学生会館へ向かう。 仕事が早く終わった。所属していたサークルに顔を出したかった。 で、学生会館1階の音楽鑑賞サークル『MINT JAMS』のお部屋前まで来たワケである。 ドアをノックする。 『どうぞー』という声が聞こえた。フレッシュさが感じられる女子の声。 新1年生の川口小百合(かわぐち さゆり)さんが入室を促す声だった。 中に入ってみた。 小百合さんと、それから蜜柑さんが居る。 2人に挨拶をしてから、 「蜜柑さんがここまで来るのって珍しいですね。用事でもあったんですか?」 「用事というか、時間潰しです。来部外者ですから、このサークルのお部屋に長い時間居させてもらって良いものかとは思ったんですが……」 「長時間滞在も全然OKだと思いますよ。蜜柑さんなら、咎める人なんて居ませんよ」とおれ。 「そうですよ蜜柑さん。サークル部屋に来てくれると嬉しい人、私の他にも沢山居るはず」

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    s-johnny
    s-johnny 2024/07/12
  • 【愛の◯◯】どうしようも無く要求してしまう姉のわたし - 音楽と本、それからそれから……。

    可愛い可愛い弟の利比古がマンションに来てくれた。 アツマくんはもちろん仕事場に行っている。 独り占め。 午後1時ちょうどに大学からマンションの部屋に帰り、利比古がインターホンを鳴らすのを待っていた。 現在、午後2時53分。 薄い黄緑色のエプロンを着て、キッチンを背にして、ダイニングテーブルの席についている利比古と向き合っている。 エプロンを着る必要は来は無かった。お菓子を調理してべさせてあげるワケでは無かったから。でも、家庭的な雰囲気を身にまといたくて、敢えてエプロンを装着した。 家庭的な雰囲気に加え、エプロンの薄い黄緑色が醸し出す清涼感が、利比古に良い印象を与えているはず。 ニコニコ笑顔を絶やさないように努めつつ、 「どう、利比古? 用意しておいたシュークリームが、コーヒーと絶妙に合うでしょ」 と言ってみる。 「美味しいよ。シュークリーム、甘いけど、クドくない」 そうでしょそうでしょ

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    s-johnny
    s-johnny 2024/07/11
  • 【愛の◯◯】手始めはカウンターの店員さんに - 音楽と本、それからそれから……。

    午後3時過ぎ。 都内某喫茶店。 オリジナルブレンドコーヒーを飲み切った姉。 満足げな微笑みで、 「91点」 と採点結果を言う。 「辛口のお姉ちゃんにしては高評価だね」 「素晴らしい完成度のオリジナルブレンドだったんだもの。素材の良さが如何なく抽き出されていたわ」 「素材ってコーヒー豆?」 「もちろん」 向かいの席の姉はニヤリとして、 「コーヒー豆の違いだとか、利比古にはまだ判らないみたいね。わたしだったら、一口目で、『違い』が判るんだけど」 確かに、味わいの微妙なニュアンスだとか、ぼくには判らない。 国内でも指折りの『女子大学生コーヒー博士』であると思われる姉は、抽出方法などにも詳しい。いや、詳しいというレベルではない。ネルドリップがどうとかサイフォンがどうとか、講釈を延々と聞かされて参ってしまったコトが何度もある。 「利比古。コーヒーを美味しく飲むためのガイドブックを今度あんたにプレゼン

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    s-johnny
    s-johnny 2024/07/10
  • 【愛の◯◯】触れんばかり、と思いきやパンチ - 音楽と本、それからそれから……。

    追いかけてきたあすかさんが、ノックもせずにぼくの部屋に入ってきた。 「なんなんですか、あすかさん。明日の準備をして早く寝たかったんですけど」 「まだ早いよっ!」 「早くないです。もう夜の10時です」 「大学の授業の準備とかにそんなに時間がかかるの!?」 あすかさんは苛立ち半分、呆れ半分だ。 勉強机の前に立っているぼくに向かってずんずん接近してくるあすかさん。 「ぼくに詰め寄ってくる前に用件を教えてくださいよ」 「用件は1つしかない」 なにか紙袋のようなモノを彼女は右手に携えていた。 その場に腰を下ろし、紙袋のようなモノの中身をドバッと放出する。 『PADDLE(パドル)』。彼女が編集に携わっているミニコミ的雑誌なワケなのだが、 「わたしが書いた記事の誤字を利比古くんに見抜かれたのが悔しかったの。今まで書いてきた記事を読ませて反撃したかったの」 「理屈がおかしくないですか。ぼくに記事を読ませ

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    s-johnny
    s-johnny 2024/07/09
  • 【愛の◯◯】わたしの『利比古くん育成計画』 - 音楽と本、それからそれから……。

    午後4時前。南浦和のバイト先から邸(いえ)に帰ってきた。 シャワーを浴び、Tシャツと短パンに着替える。 リビングに行き、ソファにぺたんと座り、友だちとLINEのやり取りをしたりする。 LINEが一段落したあとで、ワイヤレスイヤホンを耳に突っ込み、音楽を聴き始める。 例によって、90年代もしくは00年代の和製ロックミュージックである。 2003年産まれの女子らしからぬ選曲のプレイリストを幾つも作っていて、その中から1つをチョイスして再生しているのである。 ASIAN KUNG-FU GENERATIONの「未来の破片(かけら)」の次にサンボマスターの「歌声よおこれ」が流れてくる。 初期のサンボマスターは耳にしっくり来る……と思っていたら、リビングまで誰かがやって来る気配。 やがて姿を現したのは、ハタチの誕生日を来月に控えた好青年であった。 もしかしたら好青年ってレベルじゃないかもしれないハン

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    s-johnny
    s-johnny 2024/07/08
  • 【愛の◯◯】短冊を前にして、◯◯なためらい - 音楽と本、それからそれから……。

    夕方。 戸部邸に来ている。 『ご馳走を作ってあげるわ』と愛に言われていたのである。 玄関で出迎えてくれたのは明日美子さん。 「愛ちゃんが料理作るのを少し手伝ってあげるの」 「わあ、ステキ。明日美子さんは料理が凄腕だって聞いてますし」 「それほどでもないわよ〜、さやかちゃ〜ん」 天真爛漫な笑顔で明日美子さんは、 「リビングに行ってみると良いわよ? 愛ちゃんとアツマがくつろいでると思うわ」 「どのリビングですか?」 「いちばん大きなリビング」 彼女はそう答え、 「あのリビング、今日は七夕仕様なの」 「七夕仕様。というコトは……」 「行ってみてのお楽しみ」 × × × 「ホントだ。明日美子さんの言った通り。七夕仕様だ。七夕笹に短冊がいっぱい……」 その七夕笹は、巨大リビングの巨大なガラス窓の近くにあった。 わたしが立ってそれを見つめていると、 「短冊書いてないのはあなたぐらいよ、さやか」 と、椅

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    s-johnny
    s-johnny 2024/07/07
  • 【愛の◯◯】アイドルの資質アリな男子のイタい嗜好 - 音楽と本、それからそれから……。

    「星崎さん」 「なーにー? ムラサキくん」 「星崎さんの仕事は大分融通が利くみたいですね。金曜日なのに、仕事場の名古屋から東京に帰って来られるぐらい」 「あれ〜〜? ムラサキくんって、社会のコト、そんなに無知だったの〜〜?」 「ぬな」 「利くのよ、融通! だから、母校の学生会館の『MINT JAMS』のお部屋を訪ねるコトもできるのよ」 「OG訪問の意図は何ですか」 「ムラサキくんの行く末が心配だったから」 「ぬななな」 「……」 「ちょ、ちょっと待ってくださいっ。いきなり押し黙って、ぼくの顔を凝視しないで欲しい……」 「あのね」 「は、ハイ」 「名古屋の某・放送局のローカル番組に、わたしが担当してる男の子アイドルが出演するのよ」 「それが??」 「ムラサキくん、思い切って、就職するんじゃなくてアイドルになったら!? 向いてるかもよ」 × × × 「勧誘してくるような口ぶりだったから、サブイ

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    s-johnny
    s-johnny 2024/07/06
  • 【愛の◯◯】父の日はカラダにチカラが入る - 音楽と本、それからそれから……。

    両親の住む一軒家に来ている。 今日はなんといっても父の日! であるがゆえに、 「おとうさん、あのね」 と、ダイニングテーブルの席についているおとうさんにゆっくりと近付いていくわたし。 意図を察して立ち上がってくれるおとうさん。 わたしは緊張してしまい、紙袋を差し出そうとする両手が震えを起こしてしまう。 見つめ合うコトすら上手にできない。 大学4年生にもなって未だファーザー・コンプレックス。 そんな不甲斐無いわたしにおとうさんが、 「愛。おまえは変わんないな」 「え……。どこが?」 「いざとなると自分を出し切れないところ」 「『いざとなると』って……」 「いざ父の日のプレゼントを渡す段になって、緊張しまくってるじゃないか」 6月だというのに背中がヒヤリとするわたし。 「もっと自然で良いんだよ。おれのコトをリスペクトし過ぎてるんじゃないか? だから、全身に余計なチカラが入る」 わたしは、うつ

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    s-johnny
    s-johnny 2024/06/16
  • 【愛の◯◯】女心と6月の空 - 音楽と本、それからそれから……。

    「茶々乃(ささの)さん、今日は短縮版ですよ」 「そうなんだね、リリカちゃん」 「手短に自己紹介しておきませんか?」 「だねー。わたしは紅月茶々乃(こうづき ささの)。大学4年生で、『虹北学園(こうほくがくえん)』っていう児童文学サークルの幹部をしてて、なおかつ、音楽鑑賞サークル『MINT JAMS(ミント・ジャムス)』にも頻繁に出入りしてる。今日も、『MINT JAMS』のサークル部屋にお邪魔してるところ」 「わたしは朝日(あさひ)リリカです。『MINT JAMS』の会員で、茶々乃さんの1個下」 「リリカちゃんの自己紹介はアッサリとした自己紹介だね」 「ムラサキさんだったら自己紹介がもっとクドくなるんですけどね」 「わたしの同期で『MINT JAMS』の会員でこのサークル部屋にもほとんど常駐してるムラサキくんだったら延々と自己PRし続けそうだよね」 「さすが茶々乃さん。良く分かっていらっし

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    s-johnny
    s-johnny 2024/06/15
  • 【愛の◯◯】新田くんのスケッチブック - 音楽と本、それからそれから……。

    自転車に乗って某・公園まで向かった。 到着して広い敷地内をぶらぶら。 6月では貴重な晴れた日で、湿気のベタベタした感じもあまり無い。 ステキな日ね。 わたしは池のほとりまで来た。 そしたら、なんと!! 見知った男の子が木のベンチに座ってスケッチブックを持っていて……!! × × × 新田俊昭(にった としあき)くんだった。 わたくし羽田愛が幹事長を務めている『漫研ときどきソフトボールの会』の同級生会員。 漫画家志望の男の子。 公園の風景をスケッチして腕を磨いてるのね。偉いわ。 こちらから挨拶したら、彼はとっても驚いていた。 ベンチの左隣が空いていたから腰掛けたら、驚きに加えて緊張がプラスされたらしく、スケッチする手を止めて背気味になってしまった。 「続けたら良いのに、スケッチ」 柔らかく言うと、 「しゃ、しゃ、喋りながらだと、上手くスケッチできないから」 「そんなコトで漫画家としてやって

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    s-johnny
    s-johnny 2024/06/14
  • 【愛の◯◯】図書館で、ドイツ文学コンビに出会って…… - 音楽と本、それからそれから……。

    午前中ずっと、お邸(やしき)のハンモックで単行の推理小説を読んでいる。 向こう側から流(ながる)さんがやって来た。 わたしは、流さんの顔を見て、 「話し掛けるのは少し待ってくださいね。今、推理小説の犯人が動機を語ってるので」 「わかった」 彼は、小さなテーブルの前の椅子に腰掛け、わたしが読み終えるのを待ってくれる。素敵。 ぱたん、とを閉じたわたしは、 「読み終わったので喋っても良いですよ」 「愛ちゃんが――」 流さんは、 「推理作家のを読むなんて、珍しいね。しかも、その作家はかなりの売れっ子じゃないか」 「ながるさぁーん」 「え、えっ?? その微笑みは、なに……」 「わたしが海外のガチガチの現代文学ばっかり読んでるとか思ってません? ハッキリ言います。誤解です」 うぅ……とうろたえる彼。 少し可哀想なんだけども、 「推理小説SFもわたしの守備範囲ですから」 と言ったら、彼は苦し紛れ

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    s-johnny
    s-johnny 2024/06/13
  • 【愛の◯◯】オムライスと古着 - 音楽と本、それからそれから……。

    親友の久里香(くりか)とカフェで昼ごはんだ。 わたしも久里香もオムライスを注文した。 デミグラスソースとホワイトソースが一緒にかけられたオムライスが運ばれてきた。 卵はトロトロ。 べてみる。 ソースが2つもかかっているのに全然クドくない。 中身は、ケチャップで薄く味がつけられたご飯。ご飯の味付けが絶妙で、デミグラスソースやホワイトソースと響き合っている。お米の炊き加減も申し分ない。 あっという間にべ切ってしまった。 「よっぽどお腹すいてたんだね」 久里香に言われてしまった。 「ごめん、早いで」 謝ると、 「いいんだよ、謝らなくたって」 と笑顔で言いながら、久里香はスプーンを口に運んでいく。 少し遅れてオムライスをべ切った久里香は、 「もう一度べたくなる味だったな。このお店入って正解だった」 「そうだね」 わたしは頷いて同意する。 「さて」 と言って久里香は、 「久しぶりに、ふたり

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    s-johnny
    s-johnny 2024/06/12
  • 【愛の◯◯】彼女が妬(や)くのは思った通りで - 音楽と本、それからそれから……。

    壁時計が午後3時を示していた。 リビングのソファに座ってお菓子をべていたら、利比古くんがフラリと姿を現してきた。 「今日大学無いの?」 訊くと、 「無いんです」 という答えが。 「ヒマなんだね」と私。 「梢さんこそ」と苦笑いの利比古くん。 「座りなよ」と私。 「ハイ」 私の真正面のソファに腰を下ろす彼。 『相変わらずハンサムだねえ……』と声に出さずココロの中で呟いてから、 「お菓子あるよ。べなよ」 とお皿を差し出す私。 「ありがとうございます」 ここで私は、 「『ゆめタウン』にも、こんなお菓子売ってるのかなあ」 「え、『ゆめタウン』、ですか?」 「そ。広島県が拠地のショッピングモール的な何か」 「『的な何か』って付け足す必要あるんでしょうか」 苦笑してそう言う彼に、 「確かに」 と応え、 「西日イオンモールみたいな感じだからさ。『西日研究会』の私にとっては重要な研究対象なんだよ

    【愛の◯◯】彼女が妬(や)くのは思った通りで - 音楽と本、それからそれから……。
    s-johnny
    s-johnny 2024/06/11