天体の運動から粒子の振る舞いまで予測する科学は素晴らしい。学ぶ前は、無邪気にそう考えていた。 学ぶほど、物理学と数学は相性抜群であり、ガリレオの言う通り、自然は数学の言葉で書かれていることが分かる。だが、科学が発展することで、あらゆる現象が説明できるかというと、そうではない。それは、「まだ」未知であるだけでなく、どんなに科学が発達しても解決できない問題が、現時点でも明らかになっている。 「時」とは何か その最たるものが「時」である。時とは何か? アウグスティヌスを用いだすまでもなく、「私はそれについて尋ねられない時、時間が何かを知っている。尋ねられる時、知らない」なにかである。 数学と物理学をめぐる最適化問題を読み解いた『数学は最善世界の夢を見るか』のイーヴァル・エクランドが、数学と物理学で「時」を定義づけようと試みたのが本書になる。わたしの問題意識に真っ向勝負しているため、たいへん興味深