「優しくなるためには、〝評論〟をなくさないと」と語るみうらじゅん氏 ――現在、みうらさんは「かるな」という浄土宗出版が刊行している季刊誌で「オール・シングス・マスト・パス」という連載をされています。 言わずと知れたジョージ・ハリスンの名アルバムのタイトルだけど、「オール・シングス・マスト・パス」=「諸行無常」だということに、この雑誌を読んでいる人で気づいている人は、あまりおられないと思います。 ――みうらさんらしい仏教エッセイで、楽しく拝読していますが、中でも一番グッと来たのが、以下の一節です。「難しい経典までは読んだことがないけど、僕は勝手に仏像から〝優しくたって構わない〟ということを学んだんだ」。この「優しくたって構わない」というメッセージにはグッと来ました。 特にタイの「寝釈迦」(註・涅槃仏(ねはんぶつ)のこと)は、笑っているんだよね。あれはお釈迦さんが涅槃に入る寸前、つまり死ぬ寸前
贈呈式で受賞スピーチをするみうらじゅん氏。「賞をいただけるというのはドッキリで、本当はお叱りを受けるのではないかと……」 ――還暦を迎えてから、仏像や仏教に対する見方が変化してきましたか? うーん、どうでしょう。「小学4年生で仏像が好き」というのが、面白いとこだったんですが、「60歳で仏像が好き」では年相応ですしね。まわりから見ても、もうばっちり「仏像圏」に突入していますから(笑)。 だから、還暦を超えて普通になったんですよ。それでこういう賞もいただいた。これからは「見仏」の時のスタイルも、ちょっと考えなきゃなりませんね。 ――普通のことだけをしても意味がないと。 それもあるけど、僕が仏像に夢中になったきっかけを作ってくれたのは、母方の祖父で、一緒に仏像を見て回った時の年齢を調べてみたら60歳だったんですよ。つまり今の自分と同じ年。写真も残っているけど、おじいちゃんはベレー帽にループタイ、
著者: みうらじゅん 2018年10月4日、東京都港区芝にある仏教伝道協会にて、第52回仏教伝道文化賞の贈呈式が執り行われた。同賞は、「仏教関連の研究や論文、美術や音楽、仏教精神を基に活動する実践者など、幅広い分野にて仏教精神と仏教文化の振興、発展に貢献された方がた」を顕彰するため、昭和42年に制定。以降、毎年、僧侶や仏教研究者、仏教に造詣の深い文学者らが受賞。本年の仏教伝道文化賞を受賞されたのは、臨済宗の僧侶で花園大学名誉教授の西村惠信氏、そして平成24年度に新設された沼田奨励賞は、イラストレーターや文筆家として活躍するみうらじゅん氏におくられた。 注目すべきは、みうらじゅん氏の受賞である。小学4年生の時に仏像の魅力に開眼。いとうせいこう氏と全国の仏像をめぐる『見仏記』シリーズ(KADOKAWA)、『アウトドア般若心経』(幻冬舎)、『マイ仏教』(新潮社)といった仏教をテーマにした著書があ
著者: 宮田珠己 , 皆川典久 , 松澤茂信 しみじみと路地裏を愛でるような散歩にはもう飽きた! ドーンと散歩をしようじゃないか、ドーンと! 日常に潜む非日常を探す「スペクタクルさんぽ」を提唱して、東京から日帰りで行ける地底湖や素掘りトンネル、ジェットコースターのようなモノレールなどをめぐったエッセイ『東京近郊スペクタクルさんぽ』を刊行した、旅エッセイストの宮田珠己さん。さらなる「さんぽ」の高みを目指すべく、「さんぽの達人」を招集! 都内の谷地形に着目してフィールドワークを続け、「タモリ倶楽部」などに出演されている「東京スリバチ学会」の皆川典久さん。そして、東京の離島を1ヶ月渡り歩いたり、秘宝館バスツアーを企画してみたり、と数々の秘境・珍スポットを訪れてきた、人気サイト「東京別視点ガイド」の運営者・松澤茂信さんと、東京にいながらにして出来る、あるいは東京にいるからこそ出来る“さんぽ”の魅力
日本語の基本的な色名である「あか」「あお」「しろ」「くろ」には、「みどり」「むらさき」など後発の色名にはない特徴があります。それは、「赤い」のように「い」をつけて形容詞になることです。昔ならば「赤し」と「し」をつけました。 「赤い」「青い」「白い」「黒い」とは言えますが、「緑い」「紫い」とは(普通は)言いません。「緑(色)の」「紫(色)の」などと言わなければなりません。 このことだけを取っても、4つの基本的な色名の使い勝手は、他の色名に勝っています。「ミカンが橙(だいだい)色になる」よりも「ミカンが赤くなる」、「緑色の葉っぱ」よりも「青い葉っぱ」と言うほうが簡単です。かくして、基本的な4つの色名は、現代でもなお盛んに使われ続けています。 ところが、後発の色名でも、例外的に「い」のつくものがあります。 まずは「黄色い」。「黄い」ではなく「黄色」と「色」をつけてから「い」がついているのが「あか
娘が珍しく話しかけてくれたと思ったら、ポケモンGOの使い方についての質問だった。日本でポケモンGOがリリースされたのは七月二十二日のことであった。何の変哲もない公園に多くの人々が集まったり、危険な場所や私有地に入り込んだ人がいたり、あるいはそれによって動いた金額が非常に大きいとか、マスコミに様々な話題が提供された。 こういう屋外で楽しむタイプのゲームは、ARG(ARゲーム)と呼ばれ、その基礎はAR(拡張現実)技術にある。今回の騒動は、ARという、ちょっと耳慣れない技術の存在を社会に知らしめたということになろう。 AR技術の意義は、我々の住む現実世界とコンピュータ中のバーチャル(仮想)世界とが、空間的に一緒に体験可能になったことである。現実世界とバーチャル世界とが、同時に体験できると言ってもピンとこない人が多いかもしれないが、「ほらそこにピカチュウがいますよ。このスマホに映っている」と言えば
手に持つと実体感のある本。それをシュタイデルは「physical book」と呼んでいた。紙を熟成肉のように、インキを香水のように、と扱う手工業ぶりはすでに前回伝えたが、繰返して語る「身体的な本」とはいったいなんなのか? さらに話を掘り下げたい。 ――「physical book」を私は「身体的な本」と翻訳したのですが、おおきな反響がありました。 私の言う「physical book」とは、ハードコピーのことで、紙の本を指します。物理的に存在するもの。そして、重みがあり、手に持つと実体のある身体的なもの。開くと自然光であれ人工光であれ、それが紙に反射する本。だから紙の表面がどう構成されているかで大きな差が出てきます。まず、インキによっても違います。これらすべてが、インターネットではもたらすことのできない、ユニークな体験をもたらすのです。ゲッティンゲンでのインタビューでもお話しましたが(『世
「これから、日本に来る機会が増えると思います」 そう語り始めたゲルハルト。その理由のひとつは、先日ご紹介した『Steidl Book Award Japan』だろう。ほかにも、企業の仕事や「ロバート・フランク」展などが続くそうな。まずは、「近況」を聞いてみよう。 ――おひさしぶりです。お会いするのはインタビューをゲッティンゲン(シュタイデル社があるドイツの町)で行った2013年3月以来でしょうか。 お元気そうでなにより。『世界一美しい本を作る男〜シュタイデルとの旅 DVDブック』はすばらしい一冊になりましたね。 ――ありがとうございます。最後にお会いしてから3年が経ちます。この間の変化についてお聞かせください。以前に、全体に会社をスリム化したいというお話をされていましたね。 会社の事業規模をダウンサイジングしているわけではありません。書籍の品質を高く維持することを優先に考えているので、単に
近藤 僕は最近、暮らしにおける環境や住まいに興味があるんです。最近自分で壁紙を替えたり家具をつくっちゃったり、いわゆるDIYを楽しむ方が増えていますが、ああいうのも、家なんてこういうものだと人任せにせずに、自分の家だったらどうしたいかということを考えて、自分なりの部屋をつくるという流れだと思うんです。誰かが考えてつくったもので満足せずに、人任せにしないというのが共通するのかなと。 でも、部屋はすべて違うので、こうですという正解がない世界ですよね。「自分はこの場所にこういう部屋に住んでいるからこうしたんだ」という考えは全員違う話でしょうから、大変そうですね、追いかけていくのが。 河野 それは大変ですね。でもそういう気持ちを持った人とまた違うつながりが生まれるわけです。個別にいろいろな人の話を聞くことで、コミュニティというのは、おのずから立ち上がってくると思うんです。 近藤 そうですね。 河野
河野 私は、雑誌のコアコンピタンス(核となる能力)は「コミュニティ・ビジネス」だと思っています。「はてな」がこのオフィス空間の中に、みんなが集う場を設けておられるように、雑誌の本質は、広場性というか、同じ志向を持った人々が集うコミュニティだと思うからです。“紙に印刷されたもの”だけでは、まだ”雑誌”ではない。それを読む読者、そこに作品を発表している著者、それを媒介する編集者といった人たちの集合体、熱量の総和が“雑誌”だと思っているんです。 前回で近藤さんがご紹介下さった山極寿一さんのインタビュー記事のように、話者が情熱を傾けて語りかける。編集者がそれを聞き取る。その結果、「長っ!」と思われるような記事が生まれる。 熱量がそこにギュッと凝縮される。総和が可視化され、表現として物体化される。それが雑誌記事です。ところが、残念なことに、いまはその可視化された熱量の総和と読者とをつなげるチャンネル
河野 ちょうど「考える人」2015年春号で、ライターの近藤雄生(ゆうき)さんに「カウチサーフィンが開く出会いの扉」というエッセイを書いていただいたことがあります。「カウチサーフィン」というSNSサイト――世界各地の登録者が互いに無料で自宅に泊め合うことを目的とする――で知り合った外国人が、いきなり近藤雄生さんの家に来て泊まるんですね。すると、危ないんじゃないか、どんな人間がやって来るかわからないじゃないか。逆に訪ねて行く時は、どんな家に招き入れられるかわからないじゃないかとか、そういうリスクばかりが気になります。 ところが実際には、会った当人同士が互いにレビューを書いたりしているので、危険性はきわめて低く抑えられている。大きな事件はほとんど起きていないというんですね。むしろ予期せぬ出会いが魅力的だというのです。「1%のリスクを防ぐために、99%のいい出会いをあきらめるなんてもったいない」と
2016年4月4日 株式会社はてな・近藤淳也会長×「考える人」編集長・河野通和対談 「はてな」の”ドリーマー” 近藤淳也が考える、 「もっとリアルは楽しくなる」。 著者: 近藤淳也 , 河野通和 河野 まずは、「はてな」の上場、おめでとうございます。 近藤 ありがとうございます。 河野 近藤さん自身は、この「はてな」という“へんな会社”(*)のファウンダーです。会長という立ち位置はどんな感じなのでしょう?*近藤淳也『「へんな会社」のつくり方』(翔泳社) 近藤 いま僕自身は、会長として経営に関わるというだけでなく、新規事業準備室という部署を抱えて新しい事業をつくろうという役目なんです。 河野 近藤さんには「はてな」を立ち上げたときの夢がありますよね。インターネットという技術を使って、情報共有のための便利さをどうやって実現していくか、という。「はてな」の創業は「ITを使って世の中を良くしていこ
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