今年5月、中国山地の山あいにある過疎地に書店「ほなび」がオープンした。全国で書店の閉店ラッシュが相次ぐ中、なぜこの時期、この場所で開業したのか。果たして経営は成り立つのか。ノンフィクションライターの三宅玲子さんが取材した――。 人口3万3600人の市に書店は一軒のみ 着々と開店準備が進む本屋の店内で、地元の人たちが嬉し涙を流している。それも1人ではない。「この町に本屋ができるなんて」と、何人もの人が胸を震わせ泣いているのだ。 それほどまでに書店を人は渇望するものなのか――。 圧倒される思いとともに編集者にメールで報告したところ、こんな感想が送られてきた。 〈本屋ができることに涙を流すというのは、都会の人間には想像できないことですね。〉 同感である。しかも、大型書店から地域の書店まで、書店といえば閉店しか話題にならないこの時期に、なのだ。 広島県庄原市。中国山地の山あい、里山に囲まれた、自然