私が初めて遺体を見たのは、9歳のときだった。バイオリンの陰鬱な音色が響くなか、私は棺の足元に立ち、遺体が履いている磨かれた革靴と、光沢のあるズボンを見つめ続けていた。家族ぐるみで付き合っていたこの男性が、生前にこんな服装をしているのを見たことがなかった。 彼は、思いやりがあって時間におおらかで、常に穏やかな、とても信頼できる人物だった。私の隣りでは、両親がうなだれていた。すぐそばに、遺体の両脇の青白い指先が見えた。私たちの沈黙は続いた。そして父がため息をついた。母が手を私の肩に置いた。2人は向きを変えて部屋の後ろへ歩いていき、私は、その人の顔を見ずに、棺の横を通ってあとに続いた。 その後、そのお葬式のことはあまり考えなかった。死が、私の人生に入り込むことはなかった。だが、私の心の奥の、ときどき開ける箱の中には存在していた。それをどうしたらいいのか、どう処理すべきかわからなかったし、それが何
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