「高畑勲展―日本のアニメーションに遺したもの」が東京国立近代美術館で始まった(7月2日から10月6日まで)。筆者も「アニメーションの変革者」という2万文字を超える長文の総論を図録へ寄稿している。言うまでもなく高畑勲監督は日本のアニメーション監督中、最大級に影響範囲の広い作家であり、正直言って荷が重かった。だが、高畑勲・宮崎駿作品研究所代表の叶精二氏が各論を書かれるという前提で、なるべく新しい視点が得られるよう努力したので、ご一読いただけたら幸いである。 その執筆過程で、最終的にまとめたもの以外の考察も副産物として大量に出てきた。「マスターにあたる作家」を語るということは、根本を考えぬくことだから当然でもある。今回はその一部を応用して、展開してみたい。 もっとも引っかかったのは「そもそもアニメーションにおける演出とは何か」という根本中の根本である。多くの人は「演技づけ」だと解釈しているだろう