東貴博の「ニセ坊っちゃん」を読んだ。 父親のことが大好きな息子と、家族を愛してやまない父親との、優しくてほろ苦い交流を描いた自伝的小説である。 知らない人もいるかもしれないけど、東貴博の父親は、昭和の名コメディアン、東八郎である。 昭和の小学生というのはデリカシーというものを全く持ち合わせていないので、 「お前のオヤジってバカだよな!」 と、貴博少年に言いまくる。 その言葉を否定するために、子供なりの知恵を絞って、友達に「パパはすごい」ということを伝えようとする貴博少年があまりにもけなげ。 最も心を打たれたのは、「オヤジが買ってくれた」と言いたいが為に、必死に小遣いを貯めて、36色セットの絵の具を買って見せびらかすも、その夜にはバレてしまい、どうしてそんな嘘をついたのかと八郎に詰問される、というエピソードである。 貴博少年は、泣きながら自分の思いを伝える。 「パパにもらったって、言いたかっ