今年(2010年=本紙註)1月、福岡市で生後七ヶ月の長男に必要な医療を受けさせなかったとして、両親が異例の殺人罪で警察に逮捕された事件があった。その両親は宗教法人「新健康協会」の職員だった。同協会は二年前まで「晴明教」と名乗っていた新宗教教団で、世界救世教の分派である。夫婦は「浄霊」(手かざし)によって乳児のアトピー性皮膚炎を治せるとし、医者に診せることをしなかった。乳児の身体中には和紙製の「後霊紙」が貼ってあったという。しかし検察は、「殺人罪を立証する証拠を得られなかった」として、2月4日に遺棄致死罪で夫婦を起訴した。 こうした宗教的医療拒否による死亡事件は後を絶たない。そのたびに世間は「またか」と思い、そして忘れる。が、世間の常識では本来、思いもよらないことのはずだ。その思いもよらないことが何故おこるのか。今月29日に東京地裁で民事裁判が判決が下されるある事件についてレポートしよう。