初めに言葉ありき、と『ヨハネによる福音書』は言います。人と人がコミュニケーションを取るためには、相互に意思を伝え合うことのできるなんらかの「言葉」が必要です。その「言葉」は、身振り手振りかもしれませんし、一定の規則性を持った音声かもしれません。いずれにせよ、「言葉」は、「発話」されたその時から、忘却されます。ではその「言葉」の内容を、後々のために記憶し、記録し、想起するためにはどうすれば良いのでしょうか。一つの答えは、文字を用いることです。 コミュニケーション手段としての人類最初の文字は、古代地中海世界において使用されたシュメールの楔形文字と言われています。これを起点として、オリエントから地中海世界にかけて、様々な文字が発明されました。東アジアと並んで、この地域の文明の展開と文字は不可分の関係にあります。様々な文明の中で発明された多様な文字を用い情報を記録することによって、人々は知と経験を