「……でっかいまーら、かなまらー!」 少し遠くから祭り囃子が聞こえる。 私は公園のベンチで、一人の老人と話していた。いや、老人というにはまだ若々しい。矍鑠、という言葉がふさわしいのであろうか、白髪をたたえたその男の眼光は鋭い。 「マラは……カネでなくてはならんのだよ」。 男はそう言った。 私は、わいせつ石膏の村の人間だ。わいせつ石膏を代々作り続けていた村の人間である。そのような村は、日本各地の僻地に、そしてときには街のど真ん中に存在している。代々受け継いできたわいせつ石膏……女陰の石膏を作りつづける。そう宿命づけられた村、なのである。 しかし、私は村から出た。祖父の、父の跡を継ぎ、型職人になる道を選びたくはなかった。広い世界に出て、見聞を広めたい、そう思った。だれも引き止めるものはいなかった。去る者は追わず、それがわいせつ石膏の村の、昔からの気風だった。 そして、私はジャーナリストの端くれ