私たちは、資本主義経済に生きている。私たちは、大人になった後、四六時中、いかにカネを多く得て少なく使うか、いかに蓄えるか考えつづけている。カネは空気のように、社会全体にあまりに当然かつ普遍的に存在していて、それがわずか4000年ほど前、人類の長い歴史のごく最近になって登場したものであることを忘れてしまっている。 私は、茨城県の片田舎の中流の家庭に生まれ育った。父は大企業の管理職、母は地方公務員。地方では経済的に恵まれた方だったろう。古河市は、関東平野の北部に位置する農村地帯だったが、私が生まれた40年前には、急ピッチの工業化が進んでいて、新しく造成された工業団地に最新の工場が建設されはじめていた。私の父はそういう新設工場の一つで、生産管理の職に就くため、東京から赴任してきたのだ。 子供だった私は、まだ豊富に残る雑木林に入って、虫をつかまえたりするのが好きだった。だが、当時は次々に宅地造成が
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