「トラックに轢(ひ)かれて死んだはずの無職・引きこもりのタカシは、異世界に転生。熱膨張で敵の砲を使えなくする作戦を始め、現代の知識を使い活躍する」というのは異世界転生もののあらすじにしてもあまりに既視感が強すぎる。だが、これが息子を交通事故で亡くした母親により書かれたものだとしたら? 伊藤ヒロは、ヒーローが実在するアメリカ現代史を描くアラン・ムーアの名作『WATCHMEN』(小学館集英社プロダクション)の日本版に挑んだ『魔法少女禁止法』(エンターブレイン)、沼正三『家畜人ヤプー』をライトノベルに「リメイク」した『家畜人ヤプー Again』(鉄人社)など挑戦的な作風で知られる書き手。そんな彼の『異世界誕生 2006』は、事故死した長男の「異世界転生後」を書き続ける母親・嶋田フミエの物語だ。 しかし少なくない読み手が早々に挫折するのではないかと心配になるほど、本書で描かれる光景は痛々しい。息子
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