UIの「イディオム」を作りたい UIが劇的に改善された例として、増井さんがよく挙げるのがSuicaだ。目的地までの切符をあらかじめ買っていた頃に比べると、最初からどの駅で降りるのかを決めなくても乗車することができ、途中で気が変わっても、どの駅でも降りられるようになった。そしてそのことを、いまでは誰も自然に受け止めている。逆戻りできない変化の一つといえるだろう。 「Suicaがあれば犬でも電車に乗れる」という喩えを増井さんはよく語る。たんに切符からICカードへと物理的な仕組みが変わっただけでなく、利用者の体験自体が劇的な向上をともなったという好例だろう。 「インタフェースを作る側の開発者の意識も、現在に囚われているんですね。それに、あまり変なUIを出しても、ユーザーからすぐには受け入れられない。予測入力の「POBox」は、最初はオプション機能だったのだが、便利だとユーザーに認知されるようにな