ああ、またか。そんな怒りを感じるのは私だけではないだろう。「もうおねがい ゆるして ゆるしてください」という痛ましい文章を残して逝(い)った船戸結愛(ゆあ)ちゃん(5)虐待死事件そのものではなく、その新聞報道に対して、である。〈悲痛な心の叫びを忘れまい〉(読売)〈SOS届かず〉(毎日)〈悲劇は繰り返されてきた〉(産経)…と新聞各紙にはいつもの嘆き記事が並んだ。 ウサギ飼育用のカゴに監禁されて死亡し、遺体を川に流された3歳男児の東京都足立区・うさぎケージ虐待死事件(平成27年発覚)のときも、山中から男児(3)の白骨死体が見つかった大阪府堺市・虐待死事件(28年発見)のときも、同様の記事が並んだものである。虐待死事件のたびに、新聞は同じ論調を掲げ、識者のコメントを紹介し、事件を「嘆いてみせる」のだ。 血の繋(つな)がりがない33歳の父親に結愛ちゃんがどれほど虐待を受けていたかは、最初の一時保護