大腸がんの手術を終え、職場復帰を果たした51歳男性を待っていたのは、さらなる苦難の日々だった。そんな彼が絶望の淵で「がん哲学外来」と出会ったことで、ついに、がんよりもつらい「孤独」を癒やす光を見つけた。本稿は、樋野興夫『もしも突然、がんを告知されたとしたら。』(東洋経済新報社)の一部を抜粋・編集したものです。 【この記事の画像を見る】 ● 職場復帰も果たしたのに なぜか自暴自棄な面談者 面談者の名前は森善幸さん、年齢は51歳、妻と大学生の息子がいて、工作機械メーカーの設計部門で課長職を務めている。5カ月前に大腸がんが見つかるが、まだステージIで、主治医に勧められるまますぐに切除手術を受け、その後の治療も順調で特に問題はなく、先月から職場に復帰した。「がん哲学外来」のことは、手術を受けた病院の腫瘍内科の医者から聞いたのだという。 ここまで話が進んだ後、しばらく沈黙が続いた。先生はゆっくりとコ